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日本酒で海外販路拡大へのチャレンジ

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Image: "Innocent Rouge” ©2021, Shin-ichi Sakamoto / Shueisha Inc. All rights reserved.

日用品、化粧品、スナック菓子、食品など、様々な日本製品を海外のお客様に販売し、世界各地へお届けする、株式会社ムスび社。2020年のコロナウイルス感染拡大以来、どのようにDHLを利用いただいているのか、EC販売におけるチャレンジや、今後の展望について、株式会社ムスび(Musuvi, Inc.)代表取締役 水口 翔太氏に伺いました。

日本の駄菓子のサブスクで培った経験を活かし、さらなるチャレンジへ

ーーDHLへシフトしたきっかけを教えてください。

もともと日本のスナック菓子のサブスクリプションサービスの提供がEC販売が好調で、アメリカ、カナダの個人のお客様を中心とした、海外からの大量の発注に対応していました。件数でいうと、月間2.5-3万件、重量にすると約4万kgでした。

コロナウイルス感染拡大前は、サービスのクオリティ重視というよりも、料金面などから、他社の輸送サービスをメインで利用していました。

しかし、コロナウイルス感染拡大が加速する中、日本から海外への発送受託不可となり、一気に世界各国のお客様へスナック菓子を輸出することができなくなりました。そんな時、DHLの営業担当の方から連絡をいただき、タイムリーにお客様に届けるためにはどうしたらいいのかを相談し、DHLで発送をお願いすることになりました。

ーーコロナ禍で直面した主な課題を教えてください。

【課題その1:集荷、持ち込み対応の煩雑さ】

品質の高いお菓子のサブスクリプションは海外でもとても人気で、1回あたりの物量が非常に重いのですが、特にコロナウイルス感染が拡大しはじめた2020年は航空会社の運休や遅延などで、集荷予約ができなかったり、荷物をセンターに持ち込む際も日時指定の事前予約が必要になったりと、突発的な発送にも柔軟な対応は望めなくなりました。

【課題その2:荷物の配送状況に関する海外からの問い合わせの増加】

荷物の追跡については、本来はお客様ご自身でモニターしていただきたいのですが、荷物発送後の追跡は全て弊社のカスタマーサービスが対応していました。物量が増えるにつれ、お客様からの問い合わせも増えるため、社員の業務負担が増えていきました。

【課題その3:送料現金払い】

当時利用していた輸送サービスでは、配送料については出荷の翌日に現金払いとなっており、物量が急激に増えた弊社にとって、毎回相当額の送料を現金で用意するのは安全面で危惧しました。

 

あらゆる悩みを解決してくれたDHL

ーーDHLのサービスを利用するようになってどのような変化がありましたか?

DHLに発送業務をお願いするようになってから、コロナ禍で直面した課題が解消されました。ステイホームが続く中で、よりあらゆるものをオンラインで購入する人が増えたのは皆さんご存知の通りです。コロナ禍でもオンライン購入後すぐに商品を届けてほしい購入者にとっては、確実に届くDHLを利用することにとてもメリットを感じていただけているようです。輸送スピード、確実性を高めることで、お客様にとっては、「本当に頼んだ荷物が届くのか」、「1か月ほどかかるのではないか」という不安がなくなりますし、弊社にとっても、物流が混乱する中で、確実に届けられるのは、お客様の信頼に直結するのだということを実感しました。

成功体験から次なるチャレンジへ

ーー今後ビジネスの拡大のため新たに新商品にチャレンジしているとのことですが、具体的な取り組みを教えてください。

サブスクでの日本のスナック菓子の海外販売が好調の中、弊社は未来を見据えて新たな商品販売に着手を始めました。2020年頃からリサーチ、準備、検討を重ね、これから海外で売っていく商品の絞り込みから始めました。

遡れば2013年にユネスコが「和食;日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録したことが大きなきっかけになり、近年世界的に日本文化への注目が集まっていました。またそれに合わせるように、内閣府ではクールジャパン戦略のひとつの取り組みとして、同年日本産酒類の輸出促進連絡会議が設置されるなど、国を挙げての国際展開を推進する動きもありました。

最終的なリサーチ結果より、輸出ポテンシャル、海外からのニーズも高いことがわかり、次の注力商品として日本酒に絞り込みました。日本酒の輸出に取り組む中で、輸送業者によっては全面的にアルコールの受託不可の業者もあり、専門的知識をもった輸送業者を探していました。

輸出入通関の知識、情報提供、フォローなくしては、日本酒を世界中のユーザーへ届けるという新しい取り組みは叶いません。そこでスナック菓子の発送で発注実績のあるDHLの営業担当に相談しました。

DHLと輸送について話をしている中で、2つの重要ポイントが浮かび上がりました。

  1. 各国の輸入通関の規制(アルコールは国によっては規制が厳しい)
  2. 海外輸送時の梱包(ダメージを受けやすい瓶の形態、中味が液体であること)

DHLはムスびの不安や悩みに寄り添い、まだ発送が見込める段階ではない状況だったにもかかわらず、200ヵ国の酒類に関する輸入通関事情を調べ、どの国が規制なく輸入ができるのか、今後ビジネスを展開していくにあたって障壁はないのかなど、ムスびのビジネスプラン構築に貢献してくれました。

また、商品の梱包に関しては、DHLが資材梱包の専門会社を紹介してくれ、カートンの強化、発送・梱包の方法を工夫すべく、3社で検討をしました。 1年以上かけて準備をし、ついに2022年2月に日本酒ビジネスが開始することができました。まずは香港、シンガポールなどアジアからの受注がありました。最近では、ヨーロッパからも問い合わせが入りはじめています。

ーー今後の展望や目標、また日本酒ビジネスへの想いをおきかせください。

日本全国には大小さまざまな日本酒醸造所があり、その多くは日本国内の限られた地域でしか製品を販売していません。小規模でも昔ながらの蔵元は我が子を育てるように愛情とこだわりを込めて作っています。青森から長崎まで全国の蔵元に直接足を運んでお話を聞き、職人さんの技術や文化、日本酒に対するこだわりをもっと世界の人に知ってもらいたいと思うようになりました。

また、酒蔵の数は、1960年頃がピークでしたが、年々減少しています。一方で、海外に目を向けると、意外なことに年間輸出量は年々増加してる。それはなぜか?

知名度の高い大酒蔵の日本酒だけが輸出されており、地方の小さな醸造所は輸出のすべを知らないからです。そのパイプ役を私たちが担えれば、日本酒の奥深さを世界中の人に知って楽しんでもらえると思ってます。

例えば、海外へ送るには難しいのですが「燗で飲んでほしい」というコンセプトにこだわった鳥取県の太田酒造さんとは商品開発の段階からアイデアを出して協業しています。具体的には、海外へ輸送時に「燗で飲んでほしい」というコンセプトも必ず添えて欲しい、との太田酒造さんの要望を受け、商品を見ただけで「温めるお酒であること」がどうすれば伝わるかを考えました。また、奈良県の芳村酒造さんは、ユニークな製法を楽しみながら試しています。古代米で醸したり、精米歩合98%の酒を醸したり、はたまたイタリアのお米で醸したり。そうやって出来上がった「神仏」も職人の遊び心を含めて世界へ発信したい。

マーケティングにおいては、商品の紹介だけではなく日本酒の歴史や製法のノウハウ、蔵元のこだわり、運営の難しさなど、より購入者に理解をしてもらうためコンテンツ作成やブログの定期配信など、ECサイトにも力を入れています。

すべてはこれからの若い世代への継承に少しでも貢献できればと。まだまだムスびの日本酒ビジネスはスタートしたばかりですが、5年、10年と長い期間も視野に入れ一歩一歩構築していきたいと思っています。日本酒ビジネスを盛り上げていくためにも、海外のお客様にリーチしやすい、ソーシャルメディアを駆使するなど、新しい方法も取り入れ、世界中に日本酒文化を伝えたいと思っています。 写真左:太田酒造場にて蔵元と。 写真右:芳村酒造‐ササユリから取れた酵母で醸した「神仏」

文化的な観点からも積極的に価値づけを行い、日本酒のブランド力を世界中に高め広めていくこと、また商品の高付加価値化とそれに見合った価格設定をもとにビジネスとして軌道にのせることを目指して、ムスび社のチャレンジは今日も続きます。

注釈:DHLにおける酒類の輸出入発送について: 内容品のアルコール度数(含有量)、着地国の輸入通関の制限、1箱あたりの重量制限、DHLの標準梱包規定など決められた条件がありますので、実際に発送をご検討の場合はご留意ください。