返品無料の対応をするか否か –EC事業者にとって返品対応は大きな課題です。実際にオンライン注文の約30%程度が返品されています1。さらにStatista社の調査によると、返品無料は消費者がECサイトから購入する一番の動機となっています2。つまりEC事業者にとっては、返品送料を負担する際に発生するコストと、売上アップのバランスを取る必要があるのです。
返品時にかかる送料は、大手企業となると企業側が負担しています。特にファストファッションブランドにおいては、商品の購入前に試着して感触を確かめたいと思っている消費者にとって、返品時の送料無料は大きな魅力になっています。ファッション大手のASOSは競合他社に先駆けて返品無料の対応を始め、プロセスを簡略化するための多大な投資も行ってきました。購入者はスマホでQRコードをスキャンするだけで、返送ラベルを印刷することなく簡単に返品ができるようになっています。プリンターを持っていないZ世代にとっては非常に魅力的なサービスです。
それでも、各社の返品対応について変化は起きています。返品コストは平均で注文額の21%にのぼり3、燃料のさらなる高騰が見込まれる中、多くのブランドが対策を迫られ困り果てているのが現状です。あらゆる商品カテゴリーの中で返品率が最も高いのはアパレルなのです。
ZARA、Boohoo、ユニクロはここ数年で返品手数料の有料化に踏み切りました。この返品ルールの変更は大きく取り上げられ、X(旧:Twitter)では不満の声も多くあがりました。無料コンテンツに慣れたデジタル世代からの不満は大きかったとしても、小売業者は返送料金を購入者負担とすることを真剣に考えるべきだとMerchandising Metrics社の創設パートナー、Jeff Sward氏は主張しています。
「返品無料の対応は、ネット通販に親しんでもらいたいという目的があった時代はよい施策でしたが、今や ネット通販は十分普及しており、今後は収益性とサステナビリティに焦点を戻すべきです。もちろん、ECサイトでの返品を有料化することにより離れていく消費者もいるでしょう。しかしながら、もっと頻繁に店舗に来店するようになるかもしれません。それによってプラスの結果に転じる可能性もあります」とJeff氏はRetail Wire5で述べています。
一方でこれについては、懐疑的な見方をしている人もいます。「送料が購入者負担は問題ないが、少額だったとしても送料以外の追加費用が発生するのは抵抗を感じます」と言うのは、小売コンサルタントのGeorganne Bender氏です6。
返品無料と有料は、EC事業者にとってどちらが正解なのか悩むところではありますが、考慮すべき点を以下5つのポイントにまとめました。ぜひ参考にしてみてください。