サステナビリティは、もはや単なる流行語ではなく、ビジネス上の意思決定や消費者の選択肢の原動力となるものです。消費者は、購入したものが環境に与える影響をますます意識するようになっており、企業は全体を通じて環境に優しいビジネスを行うことが求められています。
特に日本では、政府が2030年までに化石燃料の発電比率を41%程度削減、温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減するという野心的な目標を掲げています1。
持続可能なサプライチェーンは、こうした目標を達成するための重要な手段のひとつです。サステナビリティをサプライチェーン戦略に組み込むことで、企業は環境への影響を抑えられるだけでなく、効率性、コスト削減、ブランド価値の向上といった、新たな機会を引き出すことができるのです。
なぜ日本や世界の企業にとってサステナビリティが重要なのか?
サステナビリティは、企業にとってますます重要になっています。サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、企業がESG(環境・社会・ガバナンス)に関するパフォーマンスを報告するためのガイドラインを策定しており、東京証券取引所(東証)プライム市場に上場する企業には、2030年代までに情報開示が義務付けられる予定です2。2027年からは、時価総額3兆円以上の企業を対象に段階的な導入が始まり、透明性の確保が企業経営における重要な要素となっています。
段階 | 対象企業(時価総額ベース) | サステナビリティ開示基準の適用時期(会計年度) |
フェーズ 1 | 3兆円以上 | 2027年3月 |
フェーズ 2 | 1兆円以上 | 2028年3月 |
フェーズ 3 | 0.5兆円以上 | 2029年3月 |
フェーズ4 | 東証プライムに上場する全企業 | 2030年~(未定) |
* さらなる段階を設ける可能性もあります。z
透明性を高め、持続可能性に積極的に取り組むこの動きは、企業にとって下記のメリットをもたらします:
- 環境負荷の低減:持続可能なビジネス運営とカーボンニュートラルな輸送を採用することで、企業は二酸化炭素排出量を最小限に抑え、資源を節約することができます。
- ブランド価値の向上:消費者は、持続可能性へのコミットメントを示す企業に注目しています。環境への取り組みをアピールすることで、企業はブランドイメージを高め、新たな顧客を獲得することができます。
- 投資家と消費者の期待への対応:投資家と消費者は、サステナビリティに関して透明性と説明責任をますます求めるようになっています。こうした期待に応えることで、企業は投資を呼び込み、信頼を築き、競合との優位性を得ることができます。
- サプライチェーンの回復力強化:持続可能なサプライチェーンは、調達先の多様化、倫理的な調達、リスク管理を優先するため、混乱に対する回復力が高い傾向にあります。これは、不安定なグローバル環境において、企業が課題を克服しビジネスを継続するのに役立ちます。
さらに、企業のバリューチェーン全体で発生するスコープ3排出量を把握し、それに対処することは、企業にとってますます重要になってきています。スコープ3の排出量を把握し削減することで、企業は包括的な持続可能性へのコミットメントを示し、より広範な気候変動対策の目標に貢献することができるのです。
スコープ3排出量とは何か?
スコープ3の排出は、企業のバリューチェーン全体で発生する間接的な温室効果ガスの排出と定義されています。これらの排出は、購入品の輸送や流通、廃棄物処理、販売した製品の使用など、様々な場面で排出されているものです。
スコープ3の排出量を測定・管理するのは簡単ではありませんが、企業活動全体のカーボンフットプリントにおいて大部分を占めています。

排出量の算出と開示方法
企業は、以下の2つの方法のいずれかでサプライチェーンの排出量を決定することができます:
- 関連する貿易相手国から排出量情報を入手する。
- 数式を使って計算を行う
スコープ 3排出量の算定と開示を容易にするために、日本の環境省は標準化された方法3を示しました。この方法は、スコープ3排出量を15のカテゴリーに分類し、企業が排出量を測定し報告するための枠組みを提供しています。
スコープ3の全15のカテゴリは、以下のとおりに分けられます。
- 商品の調達
- カテゴリ1: 購入した商品とサービス
- カテゴリ2: 資本財
- カテゴリ3:Scope 1または2に含まれない燃料・エネルギー関連活動
- 川上および川下輸送:
- カテゴリ4:輸送と配達(川上)
- カテゴリ9: 輸送と配達(川下)
- 製品のライフサイクル:
- カテゴリ10: 販売した製品の加工
- カテゴリ11:販売した製品の使用
- カテゴリ12:販売した製品の使用済み処理
- その他の間接排出:
- カテゴリ5:事業活動で発生する廃棄物
- カテゴリ6: 出張
- カテゴリ7: 雇用者の通勤
- カテゴリ8:リース資産(上流)
- カテゴリ13: リース資産(川下)
- カテゴリ14: フランチャイズ
- カテゴリ15: 投資
スコープ3排出量からカーボン・フットプリントを算出する方法
サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を正確に把握することは、透明性を確保し、情報に基づいた意思決定を行う上で極めて重要です。日本の環境省は、各カテゴリーについて詳しいガイドライン3と排出係数を提供しており、燃料消費量、廃棄物発生量、製品使用量などのデータに基づいて排出量を推定することができます。
スコープ3排出量の算定は複雑なため、多くの企業が専門家の支援に頼っています。DHL Expressでは、 スコープ3排出量の算定・開示・削減をサポートするさまざまなソリューションを提供しています。目標達成に向けた具体的な取り組みについては、お気軽にご相談ください。
炭素排出量の報告・開示方法
さまざまな報告・開示の方法がありますが、まず企業は、 排出量データを明確かつ簡潔に示すことを目指すことから着手すべきでしょう。以下のステップをご参照ください:
- 排出量を分類する:排出量をスコープ1、スコープ2、スコープ3に明確に分ける。
- 詳細な内訳を示す:カテゴリーごとに、排出源や活動ごとの内訳を示す。
- インフォグラフィックを使う:図やグラフで視覚に訴え、理解しやすい方法でデータを提示する。
- 関連指標を含む:総排出量、排出原単位、前年比変化などの主要指標を明らかにする。
- 算出方法の説明:排出量の計算と追跡に使用した算出方法を明確にする。
- 目標とゴールの設定:排出削減目標と達成に向けた進捗状況を伝える。
サプライチェーンをより持続可能なものにするために
持続可能なサプライチェーンを構築する上で重要なファクターのひとつである倫理的な調達とはどのようなことを指すのでしょうか。それは環境面や労働面、社会福祉を優先するサプライヤーから原材料や製品を調達することです。
倫理的な調達を行うことで、ビジネス運営が環境、および社会に与える影響を最小限に抑え、同時に企業の評価を高め、消費者との信頼を築くことができます。
ここでは、倫理的な調達を実践するためのポイントをいくつかご紹介します:
- 認証されたサプライヤーから原材料を調達する:森林管理協議会(FSC)やフェアトレード・インターナショナルなど、持続可能性に関する認証や認定を受けているサプライヤーを探す。
- 公正な労働慣行と安全な労働条件を採用する:サプライヤーが公正な賃金、適正な労働時間、安全な労働条件など、倫理的な労働環境を提供・維持していることを確認する。
- サプライチェーンにおけるトレーサビリティと透明性を確立する:原材料の原産地を追跡し、倫理的で持続可能なビジネス慣行を検証できるように、調達および生産プロセスについて透明性を提供するサプライヤーと協力する。
カーボンニュートラルな輸送をロジスティクスで実現する方法
ロジスティクスはサプライチェーンの基幹であるにもかかわらず、一方で輸送時の排出ガスや梱包材の廃棄などにより、環境に大きな影響を与えます。グリーンロジスティクスを戦略的に採用することで、企業は二酸化炭素排出量を最小限に抑え、より持続可能な未来に貢献することができます。
グリーンロジスティクスのための戦略をいくつか紹介します:
- 輸送ルートを最適化:AIやソフトウェアを活用して、最も効率的な配送ルートを計画し燃料消費量と排出量を削減する。
- 低燃費車を選ぶ:低燃費車に投資するか、電気自動車やハイブリッド・トラックなどの導入を検討し、二酸化炭素排出量を削減する。
- 代替輸送手段を活用する:道路輸送への依存を削減するため、特定の輸送、特に地方への配送については、鉄道や貨物用自転車などの代替輸送手段の利用を検討する。
- 包装廃棄物の削減:包装設計を最適化して材料の使用量を削減、またはリサイクル可能な材料を利用し、廃棄物と環境への影響を最小限に抑える革新的な包装ソリューションを模索する。
- 倉庫オペレーションの最適化:エネルギー効率の高い照明と暖房システムを倉庫に導入し、保管と取り扱いのプロセスを最適化することで、エネルギー消費と廃棄物の発生を抑制する。
責任ある事業運営で、より持続可能な未来を築く

サステナビリティの包括的な目標を達成するためには、サプライチェーンにおけるステークホルダー間の協力が不可欠である。サプライヤー、製造業者、流通業者、小売業者、そして消費者といった利害関係者が協力することで、誰もが恩恵を受ける、より持続可能なエコシステムを構築することができるのです。
DHL Expressはグリーンロジスティクスに積極的に取り組んでおり、2050年までにすべてのロジスティクスオペレーションにおいて、ネットゼロエミッションを達成することを目指しています。この「ミッション2050」の一環として、DHLジャパンでは2023年から順次、ゼロカーボン車両、つまり電動車両を日本各地に配備しています。
さらに、目標に向けた次なる一歩として、従来のジェット燃料に変えて持続可能な航空燃料(SAF)の導入を積極的に進めています。SAFは、従来の化石燃料と比較して、ライフサイクル全体で最大80%の温室効果ガス排出削減が可能です。これらの取り組みにより、DHLは環境責任へのコミットメントと、より持続可能なロジスティクス業界の実現に向けた取り組みをリードしています。
DHL Expressを物流パートナーとすることで、企業はこれらの持続可能なソリューションを活用でき、より環境に優しい未来に貢献することができます。
DHL Expressのビジネスアカウントを開設し、グリーンロジスティクスソリューションを通じて、国際輸送における二酸化炭素排出量を削減しましょう。