
店舗をもたない完全オンラインのオリジナルグッズ販売企業、ユー・アンド・アース株式会社。オリジナルのヘアバンドから、フォトフレーム、アクリルスタンドやキーホルダー、そしてビーチサンダルまで。印刷技術を主体とするあらゆるものが、オリジナルデザインで注文できる。
主力製品であるネックストラップは、なんと1本から数千本単位まで対応している。しかも、細かいデザインや納期の要求にも応じているという。これを、海外の工場でオペレーションしているというから驚きだ。
海外出張で世界中を飛び回る門田正徳社長に、日本にいるわずかなタイミングにお話を伺うことができた。
廃業、再起、そしてものづくりへ
ブラジルへ発つ日の午前、門田社長はDHLのインタビューに応じてくれた。理系の学校を卒業した門田氏の、会社員としての歩みはエンジニアだったという。メーカーのタイ工場の生産設備エンジニアとして4年、その後に流通システムを支えるサプライチェーンの情報システムを3年ほど担当した。
「おそらく誰しもサラリーマンは、年齢的に30を過ぎたころから、人生や今後のキャリアを考えるときが来ると思います。私もそうでした」。
30代で脱サラし、タイで情報システムの会社を立ち上げた。しかし起業の道は甘くはなかった。起業してまもなく仕事は途絶え売上はゼロに。そして資金は底をついた。
「無職になって日本に帰ってからは、毎朝あてもないのに通勤電車に乗っていました」。
挫折を味わっていた門田氏を救ったのは、会社員時代の取引先からの一本の連絡だった。プロジェクトの外注先としてシステム開発をやってみないかと、新しい仕事の打診だった。再びタイで、再起の足掛かりを掴んだ。今度はシステムの仕事と平行して、物販のビジネスも立ち上げた。システム開発の受注だけでは、波がある。ひとつのプロジェクトが終わり、次のプロジェクトが始まるまでの間、仕事がなくなってしまう。そこでオーダーメイドの物販ビジネスを立ち上げた。これが、現在のユー・アンド・アースの原型を形作ることになった。

再び襲う試練
オーダーメイドのものづくりビジネスは、門田氏にとっては難しいものではなかった。会社員時代に培った現場力と、システム開発力がある。生産から流通まで、エンジニアとして最前線に身を置いてきたキャリアが活きた。しかし順調にいくかと思われた矢先、再び困難が立ちふさがる。2008年、タイでクーデターが勃発。国を二分する勢力がにらみ合い、街のあちこちから煙が上がった。そして、2011年には大洪水が襲った。河川が氾濫し、大手自動車や電機メーカーの工場が水没したセンセーショナルな映像は、当時日本でも多く報道された。門田氏が外注先としていた生産工場も、再開が見込めないほどの壊滅的な被害を受けた。
再起のあとに待ち受けていたのは、度重なる試練だった。国際ビジネスには、天災や政情など地政学リスクが伴う。門田氏は、痛いほど身をもって知ることとなった。
「自社で工場をもつことになったのは、偶然だったのです。もともと自社工場は考えていなかったのですが、このような流れで、中国に自社工場をもつことになりました」。
タイ工場が壊滅的な被害を受けたことで、門田氏は中国に目をつけた。中国各地を歩いて回り、華南地区に新たな工場を見つけた。
「多くの企業は、自社で工場をもたず外注工場を活用しています。当社は、このときを契機に自社工場をもつことになりましたが、これによりオーダーメイドの要求に応える柔軟性が生まれました」。
外注工場は数量や納期など、契約に縛られフレキシブルな要求がしづらい面があるが、自社工場にはそれがない。競合他社にはない強みを、自社工場をもつことで実現できるようになったという。
例えば主力商品のネックストラップは、万博をはじめ、世界的な展覧会やスポーツイベントなどからの大量のオーダーもあれば、個人の1本からのオーダーもある。素材の種類や長さ・太さなどさまざまなバリエーションに加え、依頼主のデザインの要求は千差万別だ。オーダーごとに異なる仕様や数量、納期のリクエストに対応できているのは、自社工場がもつアドバンテージだという。
しかし海外の工場でそのようなフレキシブルな受注生産ができるのだろうか。数量や、色、形、デザイン、そして納期が一品一品すべて異なるオーダーに対応なければならない。

安定した輸入を支える国際物流
ユー・アンド・アースでは、生産品がお客様の要求を満たしているか確認するため、すべての注文は、日本に輸入後に検品している。国際輸送には最短のリードタイムが求められるため、中国の自社工場を始めたときから、DHL Expressを利用しているという。
「中国の町では、たくさんのDHLの黄色いトラックを見かけます。現地の集荷の面で、DHLはリードしていると思います。現地から集荷された貨物が、その日のうちにフライトに搭載されるのは、DHLの強みだと思います」。
消費者も納期を重要視している。オーダーメイドで発注したものは、はやく実物を見たいという心理が働くからだ。
「正確には納期・品質・価格。どれも欠かすことができない要素です。現地を夕方に出荷して、翌日には日本に届いている。そのスピード、確実性の面で、DHLを利用しています。」
少量多品種のオーダーメイドビジネスには、DHL Expressの輸入ソリューションが強力な武器となっていると評価する。

海外生産でも妥協しない品質
「DHLは、カスタマーサービスも分かりやすく丁寧であると、スタッフから聞いています」。
ユー・アンド・アースのオンラインショップは、ネット上の評価がすこぶる高い。海外生産でも短納期・高品質を実現しているだけでなく、スタッフのサポートも好評だ。問い合わせや細かいリクエストに親身に対応するスタッフに好意的なコメントが溢れている。門田氏は、お客様に寄り添った対応を重視しているという。
「新たにブラジルに支店を開設したのは、そのためです。カスタマーサービスを充実させることができるのです。ブラジルに拠点を置くことで、日本時間で15時とか16時の問い合わせやご注文に、当日対応できるようになります」。
と、ブラジルに新たに拠点を開設した理由を話す。日本との時差が逆の国に拠点をもつことで、日本の遅い時間の問い合わせや注文にも、翌日に対応するのではなく、その日のうちに対応できるようになるという。
受注生産から顧客対応まで、ハード面もソフト面も、グローバル規模で最適解をみつけて事業を拡大させてきた。試練を乗り越え、まもなく20年目を迎える。今後のビジョンは、商品点数を増やすこと、そしてDXを活用して自動化を目指すことだという。課題は多いというが、悲壮感はない。門田氏には今、試練ではなく、日本のアニメキャラクターの人気や、推し活文化など、オーダーメイドの物販ビジネスを後押しする波が、次々と押し寄せている。
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