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ラストマイル配送のパフォーマンスを向上させる4つの方法

Russell Simmons
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DHL courier handling parcel

日本でも取りざたされている「物流の2024年問題」。全世界の物流・輸送事業者が取り扱う荷物の数は、毎年じつに250億個を数えます1。そしてそのすべてが、緻密に設計された陸・海・空の輸送ネットワークを経て、きわめて正確に目的地に届けられます。しかし、ラストワンマイル領域で配送が行われる物流においては、物量の増加や人手不足問題など課題が顕著であると言われています。このラストワンマイル問題は、あらゆる関係企業にとって深刻かつ重要であると言っても過言ではないでしょう。

ここでは、なぜラストワンマイルがこれほど難しいのか、このラストマイル配送のパフォーマンスを向上させるためにはどのような方法が考えられるのか、今後の展望も含めて検証していきます。

ラストマイル配送とは?

「ラストマイル」もしくは「ラストワンマイル」とは、物流の最終拠点からエンドユーザー(注文した顧客)に届くまでの区間を意味します。 配送の拠点から消費者へ商品を受け渡すこの最後の区間は 「ファイナルマイル」とも呼ばれています。

ではなぜ、このラストマイル配送が難しいと言われるのでしょうか?鉄道、海上輸送、陸上輸送、航空輸送の複雑なネットワークは、毎年何10億もの荷物を世界中に送り出しています。この高度に設計・コントロールされた物流ネットワークは、専用の輸送ルートや輸送車両を駆使し、長距離の荷物の輸送を効率良く実現させています。しかし、旅の最後の重要な工程である、最終地域のハブや配送拠点から消費者の自宅やオフィスまでのラストワンマイルは、それ以前の緻密にコントロールされたプロセスとは完全に異なり、その管理や作業規模は案件ごとに大きなばらつきがあります。

想定外な交通渋滞、通行止め、ルートの変更、気象条件、そのほかさまざまな予測不可能な障害に、ラストマイル配送を請け負うドライバーは、そのつど個別に対処する必要に迫られます。輸送事業者の視点で言えば、物流サイクルの中で最も効率化がはかれない部分となります。単純に比較はできませんが、一度に数千単位の荷物を運ぶ航空輸送と比べると、1つの目的地に対してたった1個の荷物だけを配送する場合や、発生する個別の状況に応じて何度も停車を余儀なくされる場合は、その差はあまりにも大きいと言えるでしょう。一方で、ほとんどのEC輸送において、このラストワンマイルを担う配送ドライバーが、唯一直接的に消費者と対面することになり、消費者の購買体験の要素のひとつと考えるとその役割は大変重要です。

woman typing on a laptop in a warehouse

ラストマイル配送が直面する課題

  • EC利用者の拡大に比例して 物量も急増し、配送するドライバーの絶対数が不足
  • 非効率な発送の要因となる交通渋滞、配送車両の故障、個人宅への小口発送の増加
  • 翌日配達/即日配達/時間指定配達を希望するなど、消費者から求められる配送品質

ラストマイル配送にかかるコストは、配送コスト全体のじつに41%を占めると言われています2。このように切実な課題があるにもかかわらず、小売事業者の規模に関わらず翌日配達のサービスが当然のように求められる現状があります。つまり即日配達サービスを提供する一部の物流事業者の高度なサービス水準が基準となることが余儀なくされているのです。

事業者がそこに他社との差別化をはかり、競争に勝ち抜くためには、どのような選択肢が考えられるでしょうか?  
コストをできるだけ抑えながら、消費者が求めるシームレスかつ高品質なサービスを提供できる輸送事業者を選択することも、ひとつのソリューションとなります。

ラストマイル配送を改善するには?

主な4つの要素を検証してみましょう。

1.  地域密着型の倉庫やダークストア(注1)の活用

最終配達目的地までの距離を短縮するため、中小のEC事業者のほとんどが人気商品や季節商品を中心に、地域密着型の小規模倉庫に戦略的に在庫を分散させています。DHL Express 欧州EVPネットワークオペレーション担当副社長のロイ・ヒューズは、ニューヨークや北京など、世界各地のいわゆる「パワーシティ」がこのローカライゼーション(地域化)の傾向を促進し、牽引していると指摘しています。一部の事業者が自社で倉庫を持つリソースが不足した場合でも、物流事業者が未使用の一時保管倉庫を提供する場合があります。数多くのECブランドが在庫の保管スペースを無理なく確保でき、その地域の消費者へ即日配達サービスを提供できる基盤となっているのです。

注1:ダークストアとは オンラインショッピング専用の配送拠点として設置された店舗のこと。

woman placing parcel in parcel locker

2. 暫定的なリソースの活用で配送を高速化

地域化促進の発達により、消費者が注文したその日に商品を届ける即日配達サービスの需要がさらに高まっています。ここに登場してきたのが「クラウドソーシング配送」です。クラウドソーシング配送は、タクシー業界、食品配送業界などといった業種の垣根を超えて、資格を持った地域のドライバーと連携し、発注のあった商品を迅速に消費者に届けるものです。物流・配送の新たな選択肢の一つとなります。実際これは、物流業界が長年抱え続けてきた輸送キャパシティ不足の問題を解決しうる、優れたソリューションと言えるでしょう。膨大な物量に対して配送車両やドライバーの数が圧倒的に不足しているという業界積年の課題を、これによって一気に解消できる可能性があります。

消費者の都合に合わせた対応: 宅配ロッカーの台頭

その他にも、物流会社の営業所(配送センター)や宅配ロッカーでの荷物の受け取りというオプションもあります。消費者のライフスタイルにあわせて荷物をお好きな時に、お好きな場所で受け取るサービスは、急成長する越境EC市場の大都市における地域化をさらに加速させています。例えばDHL Expressのオンデマンドデリバリーサービス(事前配達通知・受取方法指定サービス)では消費者の都合にあわせてDHLのサービスポイントや宅配ロッカーでの引き取りを含む6つの配送オプションを提供しています。最寄りのサービスポイントは検索ページから確認することができ、また宅配ロッカーは国内2,000箇所以上のPUDOステーションでお受け取りいただけます。

finger pointing at map

3.  AIと分析技術を活用し、配送ルートの改善と環境に優しいグリーン配送を実現

高価なかさばる荷物の輸送に関して言えば、クラウドソーシング配送が現時点で完全に対応できているとは言えません。このケースにおいては、より信頼性の高い従来型の輸送事業者の利用が今でも必要とされています。しかしながら、この従来方式の配送にも、やはり課題があります。たとえば、トラックの荷降ろしに適したロケーションの選定や、市街地内の幅の狭い道路をいかに通行するのかといった現実的な問題です。実際に既定外走行距離は、ドライバーの総走行距離の 3~10% を占めるため、非効率となるルート設定は潜在コストの上乗せのリスクを常に抱えつつ、現場では今日も配送が行われているのです3

答えは、より良いルート計画

一部の情報ソース4によると、輸送事業者の配送ルート計画担当者は、1日に3~4時間もルート計画の策定作業に費やしている可能性があるといいます。

新たなテクノロジーがラストマイル配送の改善に大きく寄与する流れが拡大する中、DHLアジア太平洋地域カスタマーソリューション&イノベーション部門責任者であるメイ・イー・パンは、「消費者へのサービス提供においてデータ主導のアプローチを取る」ことが不可欠であると繰り返し述べています。

人の入り込む余地は
あるでしょうか?

各地の物流センターでは、AIとロボット技術を組み合わせ、比較的単純な反復作業を自動化する流れが加速しています。果たして、近い将来、人の手を煩わすことなくAIとロボットだけで物流産業が成り立つ時期が来るのでしょうか?DHLサプライチェーン デジタル化促進グローバル主任を務めるティム・ テツラフは、「精度の高い予測の下で構造化された環境で、反復作業や遠隔作業へのロボット導入が進めば進むほど、従業員は人だからこそできる仕事に集中し優れた能力も発揮できるようになるでしょう」と見解を述べています。AIやロボットは、人にとって代わるものではなく、あくまで人を助けるためのツールなのです。

その一方で、AIを活用した輸送ルート最適化により、ラストワンマイルを担う配送車両の二酸化炭素排出量を25%削減できるということもきわめて重要だと言えます。ソフトウェア企業 Descartes(ディスカーティス)社が開発したルート最適化ツールを使用すると、じつに552,000 トン以上ものCO2排出削減が可能であり、加えて燃費も 5% ~ 25% 削減可能と試算されています5。 すべては最適なルート計画を策定することでこれほど絶大な効果が期待できるのです。

drone delivering parcel

ドローンやロボットを使った商品配達

新たな配送オプションは続々と開発・導入されています。たとえばスーパーマーケットや街の中心部など、人通りの多い公共スペースに設置されたスマート宅配ロッカーの利用率は毎年25%のペースで増加しています。

また、すでに一部の企業は、ドローンやロボットを使った配達(記事:ドローンのトレンド- 英語版のみ)の事業化を視野に入れています。ドローン配送は、すでに医薬品や血液など、高額な医療品の分野で一部実現していますが、テクノロジーのさらなる進歩により、それ以外の配送・物流分野においても、ドローンの果たす役割が今後さらに拡大していく見通しです。ドローン配送は、Eコマースの注文数増加、あるいは都市部の交通渋滞の激化、配送ドライバー不足の深刻化によって引き起こされるサプライチェーンへの負担を軽減することが期待されています。

ドローン配送の事業化に向けて

DHLは、ドイツのライト・イム・ヴィンクル地域において3か月間にわたり、独自のパーセルコプターの運用試験を実施し、きわめて良好な結果を出しています。実際に行われた試験では、ユーザーは送りたい荷物をドローンの基地局である「スカイポート」に搬入するだけで、簡単にドローン配達のプロセスを開始することができました。今回の試験を通じて、この配達方式が迅速かつ簡単であることが実証されました。これによってインフラ整備が不十分な地域や、離島や山岳地帯などといった、自然の障壁によって輸送が困難な地域に向けても、これまでになく簡単に配送を実現できることになります。これ以外にも、より複雑で高度な飛行試験がすでに実施されています。ブルガリアの新興企業Dronamics(ドロナミクス)は、最大積載重量 350 kg、最長 2,500 km という遠距離までをカバーできる、即日配達可能な固定翼式の貨物ドローンの開発に成功しました。同社が計画している商業運用の実施に先立ち、目視外 (BVLOS) 飛行を含めた航行関連のEUライセンスを、同社はすでに取得済みです。また、南アフリカの新興企業 Cloudline(クラウドライン)社は、最近、飛行船型の自律飛行体を使った配送運用試験の実施承認をケニア政府から取り付けることに成功しています。これは最大積載重量100kgの遠隔地への配送をカーボンフリーで実現できる新技術です。

さらには米国でも、ドローン配送サービス事業者のZipline(ジップライン)社が、2022年、小規模航空事業者として米国連邦政府から正式に認可を受けました。これによって、Eコマースや医薬関連製品の配送サービスの今後の選択肢が大きく拡大する見通しです。ドローン配送の事業化に向けて自律移動技術を応用して「公道を自動で移動する宅配ロボット」の開発、活用も期待されています。無人でかつ非接触のもとロボットが配達するこのサービスは、今後の社会実装や普及が見込まれます。物流のラストワンマイルの課題解消だけではなく、EC市場の拡大など宅配需要が増加することを考えると、技術の進化も多様化するサービスの開発も必然であると言えます。

ここまで見てきたラストマイル配送テクノロジーの飛躍的な進歩を受けて、McKinsey(マッキンゼー)は、「自動走行車が荷物の 80% を配達する社会」の到来を予測しています6。 これは、ロボット輸送が支える近未来社会の到来と新たなテクノロジーの普及に今なお懐疑的な物流業界とは対照的に、一般消費者の 60% がドローン配送について「賛成、ないしは特に反対ではない」との調査結果によっても裏付けられています。

価格面での課題

これら新しい解決策には高額な初期費用がかかるかもしれません。しかし、48%の消費者が7、翌日配達サービスにある程度の追加料金を支払ってもかまわないと考えており、さらに23%の消費者は、即日配達サービスに大幅な割増料金を支払うことに前向きな姿勢を見せています。特に若年層の消費者においてその傾向が顕著であり、その割合は 30% に達します。

将来的に、この若年層が消費支出の中心を占める存在となった時、わずか12 時間の配達時間の遅れが、飽和市場において重要な価格の差別化要因として作用する可能性があります。物流事業者は、将来を見据えてコストと品質のバランスを考慮しながら消費者の大きな期待に応えられるよう、少しずつ柔軟に調整をしていくことが必要となるでしょう。

ラストマイル配送の未来

一般的な動向としては、ラストマイル配送の改善を目的とした地域化とデジタル化がよりいっそう加速する中でも、物流・配送業界も、引き続き前向きな発展を続けていくでしょう。

DHL イーコマース・アメリカ のCEOを務めるリー・スプラットは、物流・配送業界の今後の見通しに関して、「市場のトレンドにより迅速に適応し、学習とイノベーションに対するオープンな姿勢を維持しながら、変化や新たな技術への柔軟性を積極的に促進させることの重要性」を強調しています。

ラストマイル配送に関するFAQ

ラストマイル配送とは?

「ラストマイル」とは、物流の最終拠点からエンドユーザー(注文した顧客)に届くまでの区間を意味します。 配送の拠点から消費者へ商品を受け渡すこの最後の区間は 「ファイナルマイル」とも呼ばれています。 ラストマイル配送においては、できる限りコストを抑えつつ、迅速かつ正確に荷物を届けることが強く求められます。現在では、道路を使った輸送 (配送専用バン、場合によっては乗用車や自転車) や、地域のスーパーマーケットでの受け渡しサービスや宅配ロッカーの設置など、最終受け渡しの機能を担うドロップオフポイントが活用されています。さらに自律型の配送ロボットの導入やドローン配送など、新たなアプローチの試行と導入が始まっています。

ラストマイル配送の所要時間は?

物流拠点のロケーション、最終配達先、交通状況、天候、配送プロセスの効率などの条件によって、必要な時間は異なります。できるだけ迅速な配送を多くの消費者が求めている一方で、配送の信頼性とラストワンマイルの荷物トラッキングサービスも消費者にとって優先事項の上位にあげられています。

消費者の需要はラストマイル配送をどのように変えているのでしょうか?

ラストマイル配送は、「スピード」「コスト」「品質」が、重要な差別化要因となります。Eコマースでは、消費者とサービス提供者が直接的に対面する唯一のポイントがラストマイル配送です。つまり、配送ドライバーは、商品のブランドイメージを大きく左右する重要な役割を担っていることになります。またこのプロセスにおいては、翌日配達、即日配達、時間指定配達、環境に優しいグリーン配送など消費者の需要に応じたさまざまな選択肢を提供できることが非常に重要です。