世界の医療の現場では、患者や消費者を中心とした考え方が浸透しており、医療サービスの提供方法も絶えず進化をしています。日本に目を向けると、高齢化が進み医療機関のキャパシティ不足など課題が浮かび上がり、医療サプライチェーンの改革が期待されています。そのような中で、直送モデルという新しい医療サプライチェーンのモデルが、今注目されています。これは、患者一人ひとりに合わせた医療や在宅治療を実現するための重要な手段になると考えられています。
この記事では、この新しい医療サプライチェーンついて、日本の医療現場での可能性にを考察します。
未来の医療サプライチェーン、「直送モデル」とは
直送モデルは、医療のサプライチェーンにおける新しい物流コンセプトです。これまでアパレルや小売りなど、消費生活では一般的になりつつある流通の仕組みが、医療業界にも適用できないかと考えられるようになってきました。これは、製造工場から病院や薬局だけではなく、直接患者のいる自宅へ届けようというロジスティクスの新しい仕組みであり、これまで以上に様々な場所で医療を受けられる可能性が広がると考えられています。
日本では、2024年9月時点で日本の人口の約3割(29.3%)が高齢者1であり、在宅医療の需要が高まっています。そのような中で、厚生労働省が進めるデジタルヘルスの強化も後押しとなり、新たな医療物流イノベーションによる、個別化され効率的なダイレクト輸送サービスの実現が期待されています。
これまでの流通との違い
直送モデルのコンセプトは、病院や薬局などを経由する従来の流通経路を省略し、より効率的に患者に医薬品やサービスを届けることを目指します。これにより、輸送時間を短縮し、コストを抑えながら効率を高めることが期待されています。メリットは患者だけでなく、供給する企業側にとっても、業務の効率化やコスト削減につながるという大きな利点をもたらす可能性があります。
直送モデルの進化
医療のサプライチェーンの大きな変革により、患者の自宅などに直接届けられる薬剤や医療機器などのバリエーションが増えていくことが期待されています。こうしたロジスティクスの進化は、医療においては患者がタイムリーに必要な治療や手当てを受けられるようになるなど、QOLの向上をもたらします。
日本における直送モデル実現のための条件
日本において、この新しい医療ロジスティクスを実現させることはできるのでしょうか。ダイレクトモデルのサプライチェーンに関連する企業には、以下のようなオペレーションの確立に注力することが必要です。
サービスレベルと柔軟性
- 柔軟な配送オプション:治療を必要とする患者へ、必要なものが必要な日時に自宅に届けられる柔軟な配送オプションが必要です。効率的な配送が、安心できる医療サプライチェーンをもたらします。
- 患者ごとのホワイトグローブサービス:ホワイトグローブサービスとは、物流や小売りで提供される、特別な配慮や丁寧なケアを行う高品質なサービスのことです。特殊なものや壊れやすいものなどを配送する場合には、通常の配送だけではなく、専門スタッフによるきめ細やかなサポートや強力なセキュリティが必要です。標準的な配送だけではカバーできない部分をホワイトグローブサービスで補い、患者に安心して治療を受けてもらうことができます。
- リアルタイムな輸送状況の把握
医療現場では、出荷や到着予定時刻といった輸送情報をリアルタイムで把握することが欠かせません。こうした情報を活用することで、医療機関は在庫計画を正確に立てることができ、安定供給を実現できます。また、サプライチェーンマネジメントの透明性は、効率的なオペレーションをもたらします。
日本の課題を乗り越えるために:コンプライアンス、データセキュリティ、在庫管理
日本における直送モデルを成功させるためには、規制を把握し遵守するだけでなく、医療ビジネスの慣習にも対応することが重要です:
日本における規制遵守
直送モデルの実現には、当然厳しい規制に準拠することが必要です。日本の厚生労働省のガイドラインやGDPに基づいて物流プロセスを設計するだけでなく、輸送する医薬品や医療機器の盗難や汚染を防ぐ仕組みも大切です。
データプライバシーとセキュリティの重要性
直送モデルの医療サプライチェーンにおいては、患者個人のデータなど、取り扱いに細心の注意が求められます。個人の病状や診療記録、医療機器の使用状況といった情報に接するため、日本の個人情報保護に関する法律に基づき、厳格なデータ保護を実現するセキュリティシステムと教育が不可欠です。
在庫管理と配送ルートの多様化
直送モデルにおいて、製薬企業や医療機器メーカーにとって、サプライチェーン全体で在庫を効率的に管理することは大きな課題です。従来の大口の注文とともに、新たに患者ごとの個別需要の両方に対応しながら適切なバランスをとる必要があり、それぞれの流通ルートに対応するロジスティクスの見直しや再構築が求められるでしょう。病院や施設への配送だけでなく、患者個人への直接配送や前述のホワイトグローブ対応も含まれます。企業のサプライチェーン全体の効率を高めるロジスティクス戦略が必要になります。
直送モデルを支える物流基盤
直送モデルを成功させるためには、当然ながら十分な実績と輸送キャパシティを持つ専門的な物流パートナーの存在が不可欠です。DHL Expressは以下のようなロジスティクス機能を担い、直送モデルの実現をサポートします:
医療分野もカバーする輸送サービス
- 正確な取り扱いと温度管理: 医療製品を正しく扱い、適切な温度で管理することは非常に重要です。冷蔵(2-8°C)、冷凍(-20°C)、超深冷凍(-196°C)といった幅広い輸送温度ニーズに応え、輸送中の貨物の品質維持に貢献します。
- 大型または重い機器の輸送: 診断装置など、大型かつ重量のある医療機器を輸送する能力も必要です。病院やクリニックへ高価な機器を安全かつ効率的に届けることで、医療の現場に貢献します。
- 安全で時間通りの配送: 高額でデリケートな医療製品にとって、安全な輸送と時間厳守は不可欠です。DHL Expressは確立されたセキュリティ対策と迅速なオペレーションにより、重要な医療資材を日本国内で迅速かつ安全にお届けします。
DHL Expressのネットワークとラストマイルデリバリー
- 戦略的に配置された国内配送ネットワーク: DHL Expressの確立された集配インフラは、日本国内に戦略的に配置された物流センターから成り立っています。これにより、日本各地の医療機関に効率的な配送を行うことができます。
- 地域配送能力: DHL Expressは、東京の主要都市の病院でも地方都市の患者個人のご自宅へも、迅速で安全なラストマイル配送を実現する配送能力を持っています。この広範なカバー力は、日本の国際エクスプレス企業で最大規模の国内ネットワークにより実現しています。
日本における医療物流の未来
医療分野における直送モデルは、患者を中心として考える医療ケアをさらに進化させるものとして期待されています。この新しい医療サプライチェーンモデルは、個別の治療や在宅ケアをさらに充実させる可能性を秘めており、世界各地で人々がより良い健康サービスを受けられるようになります。このような新しい仕組みを成功させるためには、日本の製薬企業や医療機器メーカーと、国際物流パートナーがより緊密に協力することが必要です。DHLの医療物流サービスは、患者のアクセスを向上させ、個別のケアを支えるために重要な役割を果たすことができます。医療の国際ロジスティクスを始めるには、国際エクスプレスのスペシャリスト、DHL Expressにお気軽にご相談ください。