輸入通関の役割と目的とは?
海外から日本に貨物を持ち込むには、「輸入通関」というプロセスが欠かせません。これは、税関による審査や検査を経て、貨物を正式に国内へ流通させるための手続きです。
輸入通関は単なる税金の徴収だけでなく、国内の安全や品質を守るための重要な役割も担っています。たとえば、違法薬物や危険物、食品衛生上の問題がある商品などの流入を防ぐため、厳格なチェックが行われます。こうした仕組みによって、消費者や国内産業を保護しつつ、公平でスムーズな貿易の基盤が支えられているのです。
この手続きは専門的な知識が求められるため、専門の物流業者や通関士、通関業者との連携が一般的。専門家の協力を得ることで、手続きのミスを減らし、コストや時間のロスも最小限に抑えることができます。
輸入通関の流れを押さえよう
実際の輸入通関は、以下のステップで進みます。
- 貨物の保税地域への搬入
- 必要書類の準備・提出
- 輸入申告‐NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)システム使用
- 税関による書類審査と貨物検査
- 関税・消費税の納付
- 輸入許可と貨物の引き取り
申告書には、インボイスやパッキングリストなどの基本書類のほか、品目によっては輸入許可証など追加書類が必要です。書類審査や貨物検査で問題がなければ、税金を納付し、輸入許可が下ります。検査で不備が見つかると、再申告や追加資料の提出が必要になり、スケジュールに影響が出る可能性もあります。一般的には専門の通関業者のサポートを受けるのがおすすめです。
スムーズな通関のカギは事前準備にあり
輸入通関を円滑に進めるためには、事前準備が非常に重要です。まずは輸入する貨物の内容や数量を確認し、それに対応した規制や必要書類を整理しましょう。
書類の例としては以下の通りです:
- コマーシャルインボイス(仕入先からの請求書)
- パッキングリスト(梱包内容の明細)
- AWB(航空貨物運送状)、海上輸送の場合はB/L(船荷証券)
品目によっては、輸入許可証や原産地証明書などが追加で必要になる場合もあります。
また、HSコード(世界共通の品目分類コード)*の選定も非常に重要。誤ったコードを使用すると、関税額に誤差が生じたり、違法とみなされる恐れもあります。特に初めての輸入で不安がある場合には、専門家に任せることで手間とリスクを大幅に軽減できます。 *「HSコード(Harmonized System Code)とは?貿易・輸出入における基本ガイド」では、わかりやすく具体的にHSコードについて説明しています。こちらもご参照ください。
輸入申告から税関検査までの流れ
必要書類が揃ったら、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を通じて税関に輸入申告を行います。税関は書類と貨物の内容が一致しているかを審査し、必要に応じて現物検査を実施します。この際にも、適切なHSコードを用いて税率を正確に計算しておくことが不可欠です。コードの誤りは、余分な税金支払いや後のトラブルにつながります。なお、すべての貨物が検査対象となるわけではありませんが、記載内容に問題があると詳細検査や追加資料の提出が必要となります。正確な書類作成がスムーズな通関の第一歩です。
許可後の納税と貨物の引き取り
税関の審査が完了し、問題がなければ輸入許可が発行されます。その後、関税や消費税を納付し、貨物を正式に引き取る流れとなります。税額は、インボイスの記載価格やHSコードに基づいて算出されるため、事前に見積もり*を取っておくと安心です。引き取り後は物流業者が倉庫や指定先へ輸送を行い、国内での流通がスタートします。ただし、規制対象の品目では追加の許認可が必要となることもあります。あらかじめ確認しておくことで、予期せぬ遅延やコスト増加を防げます。
*DHL Expressが提供する マイグローバルトレードサービス(MyGTS)は、国際貿易のための無料のオンラインポータルです。統計品目番号(HSコード)の検索や、関税を含めた諸費用の算出、各国の通関における制限や禁止事項などの確認ができます。

輸入通関に必要な書類一覧とそれぞれの役割
前述した通り、輸入通関に必要な主な書類は以下の3種となります。
- コマーシャルインボイス:取引内容や金額を記載した請求書。関税計算のベースとなります。
- パッキングリスト:貨物の梱包状況や数量・重量を記載。
- AWBまたはB/L:貨物の輸送手段を証明する書類。
これらの書類の内容が一致していないと、税関審査が長引いたり、申告修正が必要になることがあります。関係者全員で情報を共有し、整合性を保つことが重要です。
食品・医薬品など規制対象品目での追加書類に注意
食品、医薬品などを輸入する場合は、法律に基づいた追加書類の提出が求められます。たとえば以下の書類は健康や安全面をチェックする目的で必須とされています。
- 品質証明書
- 成分分析表
- 製造元の認可証
さらに、検疫所や厚生労働省など複数の機関が関与する場合もあります。各機関ごとの要求事項や書類フォーマットをしっかり把握して準備することが重要です。時には現地のメーカーやサプライヤーに追加情報を依頼しなければならないため、輸入者のリードタイムに余裕を持たせるのがセオリーです。また、輸入時にはサンプル検査が行われるケースもあるため、検査費用や検査結果の待ち時間を考慮に入れたスケジュール管理を行いましょう。
保税地域に関する書類と手続き
貨物はまず保税地域に搬入され、通関手続きが完了するまで一時的に保管されます。ここで必要となる書類は貨物搬入の目的や内容、保管期間などを明確にし、税関が適正に管理できるようにするためのもので、以下となります。
- 保税地域蔵入承認申請書
- 保税作業許可申請書
保税地域をうまく活用することで、税金支払のタイミングを調整し、輸入後の準備時間を確保することができます。
輸入通関にかかる期間と費用の目安
輸入通関に必要な時間とコストは、貨物の種類や検査の有無、書類の整合性などによって大きく変動します。一般的には、必要書類が揃っていて特別な検査がなければ、通関にかかる期間は2〜5営業日程度が目安となります。
ただし、検疫対象品目や法令に基づく追加の確認が必要な場合は、1〜2週間以上かかることもあります。スケジュールにはある程度の余裕を見ておくことが、安全で確実な輸入につながります。
費用面については、以下のような項目が主に発生します:
- 関税・消費税*:インボイス価格やHSコードに基づき計算
- 通関手数料:通関業者へ依頼した場合の手数料
- 倉庫・保税地域の利用料:保管期間に応じて発生
- 検査費用:対象品目によっては、別途検査手数料やサンプル費用が必要
- その他費用:書類の翻訳費や運送に関わるコストなど
事前に輸入計画を立て、各項目の費用を見積もっておくことが、不要な出費やトラブルの回避につながります。 *「輸入税金と関税:計算方法と通関のヒント」の記事もご参照ください。
専門の業者を活用するメリット
輸入通関は、「通関が完了したら終わり」ではありません。通関後も、輸入貨物に関する情報を正しく記録・管理することが非常に重要です。とくに、過去の輸入履歴や納税情報を体系的にまとめた“輸入実績”の管理は、企業の輸入業務を継続的に最適化するうえで欠かせません。例えば、輸入実績を社内で適切に管理しておくことで、次のようなメリットがあります:
- 過去のデータをもとにしたコスト分析や納期予測が可能になる
- 今後の輸入計画や仕入れ判断をより正確に行える
- 税関や行政機関からの問い合わせにも迅速に対応できる
さらに、特定の品目や大量輸入を行うケースでは、輸入実績の定期的な報告が法令で義務付けられていることもあります。その場合は、所定の様式や期限に従って正確に報告する必要があります。これを怠ると、行政処分や罰則の対象となる可能性があるため、十分な注意が必要です。
通関実績とは?報告の必要性を知ろう
「通関実績(輸入実績)」とは、どのような貨物を、いつ、どこから、どのように輸入したかを記録した情報の総称です。具体的には以下のような内容が含まれます:
- 品名・数量・単価・申告金額
- 関税・消費税の支払額
- 通関日・輸送手段・輸入先国など
これらの情報を正確に記録・保管しておくことで、将来的な税務調査や監査への対応が容易になります。また、一部の輸入品目については、輸入数量の上限管理や規制の目的で、輸入実績の報告が義務付けられている場合があります。該当する場合は、報告の要否や提出方法を事前に確認しておくことが不可欠です。
正確な輸入実績の記録と報告は、企業のコンプライアンス体制の強化にも直結します。信頼ある輸入業務を継続していることを示すことで、税関からの信頼が高まり、将来的には監査や検査の頻度が軽減される可能性もあります。その結果、業務の効率化やコスト削減といった実利にもつながるでしょう。
報告しないリスクは想像以上に大きい
本来必要な通関実績の報告を怠ると、法令違反として厳しい処分を受ける可能性があります。特に、優遇措置を受けている事業者や、規制が厳しい品目を取り扱っている企業は、監査のリスクが高まります。違反が発覚した場合、過去にさかのぼって修正申告が必要になるだけでなく、罰金や輸入停止措置といった重いペナルティが科されることも。さらに、こうした不備が繰り返されれば、企業の信用にも悪影響を及ぼし、金融機関や取引先との関係に悪影響が出ることも考えられます。また、税関から「要注意事業者」としてマークされると、今後の審査が厳しくなり、通関に時間や手間がかかるようになります。こうしたリスクを避けるためにも、通関実績の記録・管理・報告は日頃からしっかりと行うことが不可欠です。

関係法令と関連機関:押さえておくべきポイント
通関実績の管理や報告は、単なるルーティンワークではありません。企業の信頼性や事業継続に直結する重要な業務です。自社での対応が難しいと感じる場合は、物流のプロフェッショナルである物流業者や通関業者に相談するのもひとつの手。専門的な知識と実務経験を持つ業者の力を借りることで、通関業務全体の効率化が図れます。
輸入通関を支える主な法令とは?
輸入通関を大枠で規定しているのは「関税法」です。この法律では、関税や消費税の徴収、輸入禁止・制限品の取り扱いなどが定められています。実際の手続きは、通関業法や貿易管理令など、さまざまな関連法令と連動して運用されており、品目によってはさらに個別の法律が適用される場合もあります。関税法の目的は、税収確保や国内産業の保護だけでなく、統計データの収集や安全保障にも及びます。違法薬物の流入を防ぐなど、社会的な役割も担っているため、輸入者には正確な申告と書類提出が求められるのです。加えて、これらの法令は定期的に改正されるため、常に最新の情報をキャッチアップすることが重要です。税率の変更や規制対象の追加などは決して珍しくありません。安定した輸入ビジネスを継続するためにも、日頃から法改正の動向にアンテナを張っておきましょう。
まとめ
最後に、輸入通関のポイントを振り返りながら、今後の対応方針や注意点を整理しておきましょう。
輸入通関は、海外から日本へ貨物を持ち込む際に欠かせない重要な手続きです。書類の準備や税関での審査対応など、いくつものステップを正確にこなす必要があります。特に食品や医薬品など、法令で規制されている品目を扱う場合は、関係機関の許可取得が求められるため、より慎重な対応が求められます。事前の準備と専門家の力を借りることが、スムーズな通関につながります。また、HSコードの選定や関税率の確認は、輸入コストの算出に直結するため、最初の段階で正確に行うことが重要です。わずかなミスが予期せぬコスト増やトラブルの原因になることもありますので、必要に応じて税関や通関業者への相談をためらわないようにしましょう。事前にスケジュールや費用の見通しを立てておくことで、事業運営の安定性も向上します。
最終的には、関連法令や制度の理解を深め、コンプライアンスをしっかり守ったうえで輸入業務を行うことが大切です。通関実績の記録・報告も怠らず行うことで、社内管理の強化や信頼性向上につながり、今後のビジネス拡大にも大いに貢献します。ここまでご紹介してきた通り、輸入通関にはさまざまな注意点がありますが、正しい知識と対策を押さえておくだけで、業務の効率化やコスト削減にもつながります。DHLでは、お客様の輸入ビジネスをよりスムーズに、より安心して展開いただけるよう、トータルでサポートしています。DHLが選ばれる理由は、次のようなメリットにあります。
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