- Credence Research, Apr 2025
- OEC, Jul 2025
- FDA Gov, Jan 2018
- PMDA
- FDA Gov, Jan 2024
日本の医療機器は高精度・高品質で知られており、診断装置から外科用手術器具まで、日本製の医療機器は世界のマーケットから高く評価されています。
2024年のデータによりますと、日本は8,770億円相当の医療機器を海外へ輸出しており、日本の輸出品目の中で19番目に多いカテゴリーとなっています。主要な輸出先はアメリカで、そのうちの2,890億円相当が輸出されました。アメリカ向けは特に、2023年から2024年にかけて526億円も伸長しました。
日本の医療機器メーカーや販売会社にとっては、これは大きなビジネスチャンスと捉えることができます。しかしながら、日本からアメリカへ医療機器を輸送するには、長距離の輸送や様々な規制に対応する必要があります。FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可や通関書類に不備があると、税関で差し止められたり、配達が遅延する可能性があり医療現場に影響を及ぼしかねません。
輸送の遅延につながるおもな理由には、以下のようなものがあります。
l 規制要件:医療機器はFDAでの登録・認可が必要であり、必要書類や認可が揃っていないと通関手続きが行えません。
l 書類不備:インボイス、パッケージラベル、シリアル番号や適合証明書などが不十分だと、通関で差し止められてしまいます。
l 安全性確認:輸送中の温度管理や梱包が基準を満たしていないと、品質担保ができずに輸送ができません。
医療機器の国際輸送を確実なものにするためには、相手国の規制や必要書類、適切な梱包方法を理解することが不可欠です。この記事では、規制を遵守し効率的な輸送を実現するための重要なステップを解説します。
医療機器を海外に配送する場合、特に外科用手術器具などの専門的な機器は、患者の安全を守るために各国で定められた厳しい規制に従わなければなりません。日本とアメリカでは、これらの規制を監督するそれぞれの機関が存在します。日本では、PMDA(医薬品医療機器総合機構)とFDA(アメリカ食品医薬品局)がその役割を担っています。
医療機器は、輸出される前に日本国内の規制を完全に満たしている必要があります。PMDAは、日本で製造・販売されるすべての医薬品や医療機器について、品質、有効性、安全性を確認する機関です。つまり、輸送を予定している機器も、まず日本国内で厳しい確認を受けなければなりません。このように、国内での承認を得ることが、海外輸出の第一歩となります。
次に医療機器をアメリカに輸送する場合、FDAの監視の対象となります。FDAは、すべての医療機器の輸入を規制し、その安全性、有効性、公共衛生基準の維持を目的とするアメリカの連邦機関です。
FDAの規制は非常に幅広く、機器の分類や市場に出す前の審査、品質管理システムの整備など、様々な条件を満たす必要があります。国外の製造業者には主に以下のような要件が求められます。
● 施設登録:すべての国外の製造業者は、FDAに製造施設を登録しなければなりません。登録は義務であり、毎年更新する必要があります。
●デバイスリスト:輸出予定の各種医療機器(外科用器具など)は、FDAの医療機器データベースに正しく登録されている必要があります。
●米国代理人:国外の製造業者は、アメリカ国内に拠点を持つ代理人を任命しなければなりません。この代理人は、FDAと製造業者をつなぐ公式な連絡窓口として機能します。
このように、医療機器を輸出入する際は、輸出者であるメーカーや販売店だけでなく、輸入する側も製品も、FDAの求める要件を厳守しなければなりません。要件を満たしていない貨物が輸入されようとする場合、荷物が止められ配送が遅れるリスクに繋がります。
医療機器を海外に輸入または輸出する際に必要な書類が揃っていないと、通関の遅延、場合によっては米国税関によって輸入が拒否される原因になります。外科用手術器具など特定の規制を含む医療機器の輸送では、すべての書類が正しく準備されている必要があります。
コマーシャルインボイスは、国際貿易におけるもっとも重要な通関書類のひとつであり、輸出者と輸入者の間の公式な請求書として機能します。税関当局は、この書類をもとに関税や消費税の算出を行い、規制に適合しているかを確認します。とくに医療機器を輸送する場合、コマーシャルインボイスの内容が不正確または不十分であると、通関で差し止められたり輸送が遅延する恐れがあります。医療現場での使用が予定されている精密機器だからこそ、正確かつ詳細な記載が不可欠です。
医療機器のインボイスには、以下の情報が必要です:
・ 製造業者、発送元、米国の受取人(輸入者)の名前と住所
・ 各デバイスの正確な説明
例えば外科用手術器具の輸出の場合、「手術器具」とだけ書くのではなく、「無菌ステンレス鋼メス、モデル#XYZ」などのように、より詳細に具体的に記載することが求められます
・各特定デバイスに対する正しいハーモナイズドシステム(HS)コード
・原産国
・商品の正確な評価額
これらの詳細をすべて含めることで、関税当局は出荷内容を迅速に確認でき、国境を越えたスムーズな処理が可能となります
アメリカに輸入されるすべての医療機器について、FDAは貨物が到着する前に事前通知(Prior Notice/PN)を提出するよう求めています。この事前通知によって、FDAは輸入される製品を事前に確認し、検査や配送に必要な準備を行えるようになります。
事前通知に記載すべき主な情報は以下の通りです:
・日本の製造業者のFDA施設登録番号
・配送される製品ごとのデバイスリスト番号
・米国の輸入者の登録番号
・ 指定された米国内代理人の指名と連絡先(必要な場合)
これらの情報が揃っていない場合、アメリカ入国時に配送が自動的に保留される可能性があります。
エアウェイビル(AWB)は、航空会社や物流会社が発行する運送状です。この書類は運送契約、そして出荷中の追跡情報としての役割を果たします。エアウェイビルには通常、以下の情報が含まれます:
エアウェイビルは関税の計算には使用されませんが、輸出者や受取人、運送業者を確認するために必要です。
原産地証明書(COO)は、自由貿易協定に基づいて関税の優遇を受ける際や、製品の原産地を確認する際に必要となります。必ずしも医療機器に必要ではありませんが、以下の理由で求められることがあります:
この証明書には、医療機器がどの国で製造されたかが明記され、商工会議所などの認可された機関によって署名されたものが必要です。
パッキングリストとは、貨物の梱包とその内容品を明確にする書類です。FDAによって必須ではありませんが、税関職員がインボイスと照らし合わせ貨物の内容を迅速に確認するのに役立ちますので、準備するとよいでしょう。
このリストには以下の情報を含める必要があります:
特に集約出荷や、複数の製品バリエーション(SKU)が含まれる場合、このパッキングリストは検査時に非常に便利です。
無菌状態で配送される医療機器や外科用手術器具については、正しく減菌されていることを示す記録を提出することが求められます。製造業者は、減菌手順を確認し、基準を満たしていることを証明する文書を準備しなければなりません。
アメリカでは、無菌で販売される医療機器については、FDAに提出する「510(k)」と呼ばれる市販前申請書類通知の中で、どのように滅菌されたかを説明する必要があります。これは、その滅菌方法が正しく機能し、FDAの規定に合っていることを証明するためです。
製造業者は配送時に以下の情報を準備しておく必要があります。:
・使用された滅菌方法(例:エチレンオキシド、ガンマ照射、蒸気滅菌など)
・製品が無菌であり、医療現場で安全に扱えることの証明
・認定された研究所や承認された品質保証プロセスによって発行された補足文書
これらの文書は、FDAや米国税関・国境警備局(CBP)によって厳しく審査されます。記録に不備があると、審査が遅れたり、最悪の場合は輸入が許可されない場合もあります。
国際輸送、特に医療機器の配送では、安全面と衛生面を確保することが非常に重要です。特に航空輸送中には、振動や衝撃、気圧や温度の変化などのリスクがあり、それによって製品の品質が損なわれる恐れがあります。そのためには適切な梱包が欠かせません。梱包は、出発地から目的地まで製品の品質を保つために、以下のように複数の組み合わせで構成されます。
一次梱包は最初の層で、医療機器が直接入れられる部分です。通常は無菌状態を保つため医療用グレードのポーチまたはトレイで構成されます。この層が確実でないと、製品の清潔さが損なわれます。
次に、一次梱包した製品を外部の衝撃や圧力から守る層で包みます。この層は輸送中の衝撃から守るために設計されており、成形トレイなどのインサート(緩衝材)を用いて輸送中の振動や衝撃を吸収し、機器へのダメージを最小限に抑えます。
最後の段階では、外側の配送用カートンで、国際輸送の過酷な条件に耐える強度の高い箱を使用します。箱には「無菌」、「医療機器」など、内容物に応じたマークやラベルを明示し、取り扱い方法や注意事項も記載しておくとよいでしょう。これにより、配送時のハンドリングや検査がスムーズになり、規制の確認にも役立ちます。
医療機器を海外へ輸送するには、単にスピードがあればよいわけではありません。求められる規制への理解、正確なオペレーション、そして信頼性が不可欠です。DHL Expressはそれらを高い基準で満たしており、多くの日本の医療機器メーカーや販売店からもご利用いただいています。
● 規制の専門知識:DHLには各国に、FDAをはじめとする世界の医療機器規制を熟知した通関専門チームがあります。輸送前に必要な書類が規則に沿って準備されているかを確認し、遅延などのトラブルのリスクを最小限にします。
●強固なネットワークとセキュリティ:デリケートな医療機器を安全に届けるため、DHLのグローバルネットワークは全体が管理され、医療機器に対して高いレベルのモニタリング体制を提供しています。
●カスタマイズドサービス:必要に応じて温度管理が必要な品目や、特別な集配アレンジが必要な輸送案件など、医療配送に求められる特殊なニーズにもお応えします。
●グローバルで評価される信頼性:DHL Expressは、世界各地で医療機器配送の経験を持ち、確立された業務手順と品質管理に基づき、ドア・ツー・ドアの国際輸送において一貫した安心と信頼をご提供します。
これまで述べたように、日本からアメリカへの医療機器輸送は、3つのポイントがあります。それは、規制の遵守と正確な書類作成、そして確かな梱包です。そのためには、これらに適切なアドバイスをしてくれる経験豊富な物流パートナーが欠かせません。
DHL Expressのメディカルエクスプレスは、ライフサイエンスやヘルスケア産業のお客様のニーズを満たすよう設計された特別な輸送ソリューションです。時間や温度管理が求められる配送ニーズにもお応えしますし、医療機器を安全に、タイムリーにお届けすることを目指します。
メーカーや商社など、医療機器の輸出に携わるお客様も、国際輸送のご相談は、DHL Expressまでお気軽にお問い合わせください。