
HSコード(Harmonized System Code)は世界的に統一された品目分類制度である一方、各国の独自要素が加わることで、実務面での違いが生じることがあります。特に、各国が6桁目以降を独自に細分化するため、同じ製品でも輸出先・輸入先ごとに異なるHSコードが適用されることがあります。例えば、アメリカではHSコードに基づくHTSコードが存在し、特定の品目に対して異なる関税率が設定されることが一般的です。また、ヨーロッパではCNコードやTARICコードと呼ばれる、EU(欧州連合)が使用する独自の品目分類番号があり、これらは関税の適用や規制管理において重要な役割を果たしています。このように、各国特有の品目分類番号の違いを把握しておくことは、関税計算や書類作成の効率化に大きく寄与します。
HSコードの基本:世界共通の仕組みとは
まずは世界で標準化されたHSコードが、どのような役割を担っているのかを見ていきましょう。
HSコードは世界税関機構(WCO)が策定する国際的に標準化された品目分類で、貿易上の主要言語ともいえるほど重要です。元々は、世界中で取引される多様な貨物や商品をスムーズに分類するために、統一基準として導入されました。現在では、世界のほとんどの国や地域が6桁までのベースコードを採用し、関税率の算定や統計情報の集計などで活用しています。さらに、WCOによる定期的な改訂が行われ、最新の産業動向や製品カテゴリーに対応できるよう常にアップデートされているのも特徴です。
HSコードの定義と役割
HSコードは大分類から細分化していく仕組みです。例えば、食品や機械部品など大まかな分類から、材質、用途など細かく細分化し、統計や課税率の判断を簡潔に行うことができます。貿易業務ではインボイスなど通関書類に欠かせない情報となり、誤りがあると関税額の再計算や修正申告が発生するリスクも高まります。正確なHSコードを選択することは、貿易のコスト管理やコンプライアンス対応にも直結するため、非常に重要です。
HSコードの桁数と各桁が示す意味
HSコードは桁ごとに意味があり、世界共通部分に加え各国独自の細分が存在します。
一般的に6桁目まではWCOが定める世界共通部として運用されており、1〜2桁目の「類」、3〜4桁目の「項」、5〜6桁目の「号」という階層構造になっています。7桁目以降は国や地域によって拡張され、例えばアメリカではHTSコード、日本では統計品目番号として細分化されるなど、国独自の課税ルールや統計目的に合わせて追加コードが設定されることがあります。このため、製品を輸出入する際には、まず世界共通の6桁までを確認し、その後に、貿易相手国固有の分類を調べて、細分化させる手順が不可欠です。
6桁までの世界共通部と国内独自区分
6桁までが共通という点がHSコードの国際的な特徴ですが、7桁目以降は各国の保護貿易政策や輸入規制に対応するため作られた独自区分が加わります。例えば、EUではCNコードやTARICコードと呼ばれる8桁・10桁の体系があり、日本でも輸出入統計品目番号やNACCS用番号が設定されています。これらの違いを踏まえて国ごとに最適なコードを選定することが、スムーズな通関と的確な関税算定へとつながります。

各国特有のHSコードが生まれる理由
なぜ世界共通とされるHSコードに国ごとの差が生じるのでしょうか。
HSコードは世界的に統一されたシステムであるはずなのに、各国の貿易政策や安全基準によって微妙な違いが生じてしまうのが現状です。保護を重視する国では関税率を細かく変える必要があり、特殊な産業構造を持つ国では独自に細分化されたコードが存在するなど、さまざまな要因が重なっています。この背景を知ることは、輸出入時のリスク回避やコスト最適化に大きく貢献するでしょう。
関税率の違いと保護貿易政策
各国が自国産業を保護または振興するために関税率を上下させることが、一因として挙げられます。ある国では同じ製品でも関税率を高く設定し、別の国では低く設定することで異なる区分を与えている場合もあります。こうした政策的な調整が、7桁目以降の細かい区分となって現れるため、国境をまたいだビジネスでは常に最新の関税情報を把握しておく必要があります。
輸入規制・許可制度による独自区分
各国には独自の安全基準や輸入規制があります。例えば医薬品や化学品などは国によって規制レベルが異なるため、HSコードの細分化が求められます。これにより、管理を強化すべき特定品目を正確に分類し、許認可の取得や必要書類の作成といった実務が円滑に行われるようになっています。
主要国別にみるHSコードの特徴事例
実際に各国がどのようにHSコードを運用しているのか、代表的な事例を確認します。
世界共通の枠組みを基礎としつつも、米国やEU、日本など主要国では独自の追加ルールが定められています。これらの差異は実務レベルでのコード選定に影響を及ぼし、誤ったコードを用いると関税率のトラブルや遅延の原因となりかねません。国別の特徴を理解しておくことで、海外取引の円滑化やコスト削減を図りやすくなります。
アメリカ:HTSコード
アメリカでは、国際的なHSコードに基づいてHTSコード(Harmonized Tariff Schedule)が運用されています。HTSコードは、アメリカ国内の特有のニーズに応じて6桁のHSコードを拡張したもので、通常は10桁で構成されています。この追加の桁は、製品の特性や用途に基づいて細分化されており、同じ品目であってもHTSコードが異なる場合があるため、輸入時には正確なチェックが不可欠です。
HTSコードは、アメリカ合衆国国際貿易委員会(USITC)が管理しており、貿易業者はこのコードを使用して関税率を特定し、正確な関税計算を行います。特に、HTSコードの下位分類は非常に詳細で、例えば、同じ商品カテゴリーに属する製品でも、材質や用途によって異なるHTSコードが割り当てられることがあります。このため、商品の組成や用途に応じた適切なHTSコードの選定が重要です。
また、輸入時に誤ったHTSコードを使用すると、関税の過剰支払いや過少申告のリスクが生じるため、事前に専門家や通関業者に確認することが推奨されます。
EU:CNコード(Combined Nomenclature)とTARICコード
EU圏内では、CNコード(Combined Nomenclature)およびTARICコードという二つの重要な細分化体系が存在します。CNコードは、EUの貿易において使用される8桁の分類コードであり、主に関税の適用や統計目的で用いられています。一方、TARICコードは、CNコードにさらに詳細な情報を加えた10桁のコードであり、特に輸入時の関税や規制の管理において重要な役割を果たします。
これらのコードは、EU各国間の関税統合を円滑に進めるために設けられた制度であり、貿易業者が異なる国での関税率や規制を一貫して理解するための基盤となっています。CNコードとTARICコードは、EU全体での貿易の透明性を高め、不正確な関税の適用を防ぐための追加的なダブルチェック項目として機能します。
ただし、EUの統合市場においても、各国の国内規制や付加価値税(VAT)の取り扱いには微妙な違いが存在します。これにより、同じCNコードやTARICコードが適用される場合でも、実際の関税率や関連する規制は国によって異なることがあります。このため、EU圏での貿易を行う際には、細分化コードの確認が欠かせません。特に、新しい製品を輸入する際や、規制が変更された場合には、最新の情報を確認することが重要です。
日本:統計細分への対応とEPA活用
日本では、輸入手続きにおいて使用される9桁のコードや、統計目的での追加桁数が存在します。これらのコードは「統計品目番号」と呼ばれ、品目の詳細な分類が可能となり、関税の適用や貿易統計の収集において欠かせない要素となっています。
輸出入業務では、NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)などの電子システムを通じて、正確なコード入力が必須となります。このシステムは、通関手続きの効率化を図るために導入されており、正確なHSコードや統計品目番号が設定されているかどうかが大きな課題となります。誤ったコードを入力すると、関税の過剰支払いや過少申告といった問題が発生し、結果として追加業務やコストがかかることになります。
さらに、EPA(経済連携協定)を活用する際には、特恵関税を受けるために原産地証明書内のHSコードと整合性が求められます。正確な品目分類が特に重要であり、原産地証明書に記載されたHSコードが輸入申告書と一致している必要があります。この整合性が欠けていると、特恵関税の適用が拒否される可能性があるため、事前の確認が不可欠です。

HSコードの調べ方:実務で使える手順
輸出入業務でのHSコード調査のポイントや、役立つツールを確認します。
自社が取り扱う商品のHSコードを間違えないためには、公式情報源の活用や専門家への相談が効果的です。国境をまたぐ取引では、各国税関のデータベースをこまめに参照し、改定情報や独自細分類の有無をチェックする必要があります。特に初めて輸入する商品や、新製品などのコード分類には混乱が伴いやすいため、事前の綿密な調査が欠かせません。
各国税関データベースとWeb照会
多くの国や地域では、税関のウェブサイトにオンライン検索システムが整備されており、貿易業者は品名や材質、用途などのキーワードを入力することで該当するHSコードを迅速に探し出すことができます。このオンラインシステムは、貿易業務の効率化を図るために非常に便利なツールです。
例えば、日本では「関税分類の事前教示制度」が利用可能で、これにより事前にHSコードを確定させることができます。この制度を活用することで、輸出入業務における不確実性を減少させ、正確なコードの適用が可能となります。また、事前に確認を行うことで、通関手続きのスムーズさを向上させることができます。
さらに、他の国々でも同様のオンラインツールが提供されており、例えばアメリカではHTSコード検索システム、EUではTARICコードの検索が可能なシステムがあります。これらのツールを積極的に活用することで、誤ったHSコードの適用によるトラブルや追加コストを未然に防ぐことができ、貿易業務の効率を大幅に向上させることができます。
各国の税関データベースを定期的に参照し、最新の情報を取得することは、国際貿易におけるリスク管理やコンプライアンスの観点からも非常に重要です。特に、輸出入する商品が初めてのものである場合や、新しい規制が施行された場合には、事前の調査と確認を怠らないことが求められます。
専門機関や通関業者への確認の重要性
複雑な品目や最新技術の製品などは、独自の分類に該当する可能性が高く、担当者だけで調べ切れない場合もあります。そうした際には、通関業者やコンサルタントなどの専門家に早めに相談し、確実な情報を入手することが望ましいでしょう。
DHL Expressには通関知識が豊富なスタッフが在籍しており、輸送に関するサポートを提供しています。彼らの専門知識を活用することで、誤信や誤解によるコード選択のミスを減らせるだけでなく、スムーズな通関手続きによってビジネス全体のリスク管理にも直結します。DHL Expressのサポートを受けることで、より安心して国際貿易を行うことが可能になります。
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EPA・FTAとの関連:HSコードで得られる関税優遇
経済連携協定や自由貿易協定を活用する際、HSコードの正確な適用が重要です。
EPAやFTAでは、協定対象となる品目に対して特恵関税が適用されるため、通常よりも低い関税率や免税措置を受けられる可能性があります。ただし、そのためには対象品目のHSコードが正確に判断されていることが前提となります。もしコードを誤れば、本来受けられる特典を逃してしまうばかりか、後に追加課税を求められるリスクもあるため注意が必要です。
原産地証明書とHSコードの一致
EPAやFTAを適用する際には、原産地証明書に記載するHSコードが適切かを確認することが必須となります。輸入国側の税関担当者は、証明書と輸入申告書に記載されたコードが一致しているかどうかを厳しくチェックします。一致しない場合や不備がある場合は、特恵関税適用が拒否されるケースもあるため、提出前のダブルチェックが欠かせません。
HSコードを適切に選ぶためのポイント
正しくHSコードを選定するためには、品目の特徴や取引国の制度を十分に把握する必要があります。
多種多様な製品が存在する現代では、商品名だけでなく素材や機能、用途などを詳細に把握し正しいコードに分類することが求められます。さらにコードの改訂情報や最新の通関ルールを定期的にチェックし、変更点があれば速やかに社内体制をアップデートしなければなりません。特に輸出先や輸入先が複数国にまたがる場合は、どの国向けにどのコードが適用されるのかの確認を徹底することが、トラブル回避のカギとなります。
品目特性の正確把握と類・項目分類の確認
HSコードを正しく決定する第一歩は、商品の組成や性質を正確に理解することです。類や項目のどこに該当するかを見極めるためには、素材や生産工程、最終的な用途などの情報を整理しておく必要があります。これにより、大まかな大分類からさらに細かい特性に基づいて絞り込むことで、適正なコードが導きやすくなります。
輸出先・輸入先国の最新情報をチェック
輸出先や輸入先によっては、独自の保護政策や関税改定が頻繁に行われることがあります。特に、貿易交渉の結果に応じて関税率が変更されたり、新しい規制が施行されたりするケースは珍しくありません。そのため、取引を開始する前や契約更新時などのタイミングで最新情報を収集し、HSコードの適用に抜け漏れがないかを必ず確認しましょう。