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介護用品・福祉機器の輸入|在庫最適化とキャッシュフロー改善のポイント

Assertive device

海外製の介護用品・福祉機器を扱う企業に向けて、輸入品の欠品と過剰在庫が同時に起きる理由と、在庫がキャッシュフローに与える影響を整理。輸送モードの選び方を含め、安定供給と在庫最適化を両立する考え方を解説します。

国内の介護を支える機器には、海外から輸入される製品も多くある

日本の65歳以上人口は3,619万人、総人口に占める割合は29.4%と過去最高を更新しました(2025年9月15日現在、総務省統計局)。電動ベッドや車いす、歩行器、補聴器といった介護用品・福祉機器は、在宅介護や施設での生活を支える生活インフラといえます。補聴器の国内出荷台数は2025年に65万4,366台となり、前年の64万1,249台を上回りました(日本補聴器工業会)。

電動ベッドや車いす、歩行器、補聴器など、介護や福祉の現場で使われる機器の中には、海外メーカーの製品や海外工場で生産された製品もあります。こうした製品を扱う企業にとって、海外から日本までの輸入物流は、安定供給を支える重要な要素です。

一方で、輸入には距離と時間がかかります。長いリードタイムは在庫を膨らませ、修理や交換のたびに国境をまたぐ往復も発生します。これは物流部門だけの問題ではなく、運転資金や利益を左右する経営の問題です。本記事では、介護用品・福祉機器の輸入で欠品と過剰在庫が生まれる理由を整理し、安定供給を守りながら在庫を最適化し、キャッシュフローを改善するための考え方を解説します。

 

介護用品・福祉機器の輸入で起きやすい課題

 

海外生産による長く読みにくいリードタイム

大型の機器を海外工場から海上輸送で運ぶ場合、発注から入荷まで数週間以上かかることもあります。港の混雑や国際情勢によって、到着が遅れることも少なくありません。一方で国内では、退院や施設への入所に合わせた急な納品の依頼が多く、長い輸入リードタイムとの差が課題になります。

欠品と過剰在庫が同時に起きる

介護用品・福祉機器は、退院や介護認定、施設への入所など、利用者ごとの個別のタイミングで需要が発生します。そのため需要の変動が読みづらく、利用者の日常生活や介護現場で継続的に使用されるものも多く、欠品時には代替品の手配などが必要になる場合があります。さらに、体格や症状に応じて多品種になりやすい分野です。欠品を恐れてまとめて輸入すると、売れ筋は足りないのに別の品番は滞留する、という状態が生まれます。福祉用具はレンタルで利用されることも多く、回収品の再整備や再出荷の状況によっても必要な在庫量が変わります。かさばる製品は保管コストも大きく、在庫が資金繰りを圧迫します。価格転嫁が容易ではない商材では、在庫コストが利益を圧迫する要因になります。

修理・交換のたびに発生する国際往復

海外メーカーの製品は、故障した際に海外の修理拠点との往復が必要になることがあります。補聴器のように利用者ごとに調整された機器では、診断、修理、再調整に加えて往復の輸送や通関が発生し、一定の時間を要することがあります。その間、利用者は機器を使えません。代替機の手配や部品の緊急調達が必要になり、現場の負担も増えます。

薬機法と通関の要件

なお、介護用品・福祉機器のすべてが医療機器に該当するわけではありません。医療機器に該当する製品を輸入・販売する場合は、製品の区分に応じて、薬機法に基づく製造販売業許可などの許可・登録・承認等が必要になります。国外で製造される場合は外国製造業者登録も求められ、輸入通関時には許可証などの写しを税関に提出します(ジェトロ)。補聴器は管理医療機器(クラスII)の例とされ、品目によっては電波法の対象にもなります(同)。電動の機器では電気用品安全法への対応も必要です。HSコードの確認や必要書類に不備があると、通関手続きに時間を要する場合があります。

電池を含む製品の輸送条件

電動車いすや補聴器など、リチウム電池を使う製品は少なくありません。航空輸送では、電池の種類・容量や機器への組み込み方などに応じて、梱包、表示、申告などの要件が異なります(IATA)。海外の出荷元がこの要件を満たしていない場合、出荷の段階で計画が遅れることがあります。

供給網の分断と状況の見えにくさ

海外メーカー、輸送事業者、通関、国内倉庫、販売店やレンタル事業者と、関わる企業は多岐にわたります。貨物がいまどこにあり、いつ届くかが見えないと、二重手配や利用者・施設への説明の遅れにつながります。

 

なぜ輸入の在庫課題は解消されにくいのか

 

在庫は「不確実性への保険」として膨らむ

過剰在庫の原因は、売れ行きの読み違いだけではありません。補充にかかる時間が長く、しかも到着日が読みにくいことが、安全在庫を引き上げています。欠品が許されない介護の現場に備えるほど、「次の入荷まで足りなくならない量」を常に抱えることになります。結果として、売るための在庫ではなく「持たされている在庫」が増えます。

需要予測の精度には限界がある

介護認定や退院、施設への入所の時期は、事業者の側では決められません。多品種で需要の変動が大きい商材では、予測をどれだけ磨いても外れはなくなりません。競争力を左右するのは、予測が外れたときにどれだけ速く補充できるかという「対応力」です。需要に合わせて短いリードタイムで補充できれば、在庫で備える必要は小さくなります。

問題の多くは「輸送中」ではなく「出荷前」にある

輸入の遅延をたどると、HSコードの誤り、許可証などの書類の不備、電池情報の伝達漏れといった出荷前の準備に行き着くことが少なくありません。海外の出荷元と日本側で、必要な情報が共有できていないことが原因です。速い輸送手段を選んでも、通関で止まれば効果は失われます。

利用者にとっての価値は「使える状態が続くこと」

介護機器の価値は、納品した瞬間ではなく使い続けられる期間にあります。海外修理の往復を短くすることは、物流費の問題ではなく、利用者の満足や販売店・施設からの信頼を守ることに直結します。

「安い輸送」が結果的に高くつくこともある

輸入物流の見直しは、運賃の引き下げから始まることが多いものです。しかし、運賃を抑えてまとめて輸入すれば、保管コスト、売れ残り、欠品時の緊急手配、販売機会の損失といった見えにくいコストが増えます。運賃の単価ではなく、在庫や機会損失を含めた総コストで比較する視点が求められます。

つまり、輸入品の在庫課題を解く鍵は「需要変動に追随できる供給体制」です。在庫の量ではなくリードタイムで備える発想に切り替え、輸送モードとサプライチェーンの設計を見直すことが、在庫の削減、キャッシュフローの改善、欠品リスクの低減につながる可能性があります。

 

在庫を最適化するために輸入物流に求められること

欠品が利用者の生活に直結する一方で、在庫を持ちすぎると資金が固定される介護用品・福祉機器の輸入では、「速さ」に加えて「予定どおりに届き、必要な分を必要なときに補充できること」が評価軸になります。主な要件は次のとおりです。

 

要件

なぜ必要か

確認したいポイント

リードタイムの短さと安定性

補充にかかる時間とそのバラつきが、安全在庫の量を決める

発注から入荷までの日数と、そのバラつきを把握しているか

小ロット・多頻度への対応

まとめて輸入するほど在庫は膨らむ

売れ行きに合わせて少量でも補充できるか

通関品質

許可証の写しやHSコードなどの不備が遅延の大きな要因

海外の出荷元と必要書類を事前に共有できているか

危険物対応

リチウム電池内蔵品は輸送条件が異なる

商材ごとの輸送可否と梱包・申告の要件を把握しているか

可視性

販売店や施設に入荷見込みを説明する必要がある

貨物の所在と配達予定を関係者が共有できるか

修理品の往復対応

海外修理拠点との往復が定常的に発生する

返送と再輸入の手順や書類が決まっているか

輸送品質

精密・高額な機器は破損が代替しにくい

長距離輸送に耐える梱包になっているか



これらは商材によって重要度が変わります。補聴器や交換部品のような小型・高額品と、電動ベッドのような大型品では、最適な輸送手段も異なります。

在庫と資金効率を改善する輸入物流の戦略

 

1. 商材の特性に合わせて輸送モードを組み合わせる

すべてを同じ手段で運ぶ必要はありません。需要が安定している商材と、変動が大きい商材では、適した運び方が異なります。

商材のタイプ

例

輸送の考え方

需要が安定している定番品

基本モデルの車いす、歩行器

海上輸送で計画的にまとめて運ぶ

需要の変動が大きい品番

サイズや仕様の違いが多い機器

エクスプレスで小分けにして定期的に補充する

小型・高額品

補聴器、電子部品

エクスプレスで必要な分を必要なときに運ぶ

保守部品・交換品

モーター、バッテリー

在庫とエクスプレスの手配を組み合わせる

エクスプレス輸送は緊急時だけの手段ではありません。一定の重量がある貨物を小分けにして定期的に運ぶ方法としても活用できます。

 

2. 「まとめて入れる」から「小分けで入れる」へ

海上輸送で一度にまとめて輸入すると、運賃は抑えられても、次の入荷までの間隔が長くなり、その分の在庫を持つ必要があります。小分けにして補充のリードタイムが短く安定すれば、次のような効果が期待できます。

  • 在庫の削減:保管コストや売れ残りのリスクを抑える
  • キャッシュフローの改善:在庫に回っていた資金を、新製品の導入などに振り向けられる
  • 欠品リスクの低減:売れ行きの変化に合わせて補充できる

一方で、航空輸送を増やせば輸送費は上がります。輸送費、在庫コスト、機会損失を含めた総コストで試算することが前提です。

 

3. 通関に必要な情報を出荷前にそろえる

商材ごとにHSコード、必要書類、薬機法上の区分と許可証の写し、電池の有無と種類を一覧にしておくことが基本です。海外の出荷元とこの一覧を共有し、書類の書き方をそろえておくと、通関手続きに時間を要するリスクを下げられます。新しい商材や仕入れ先を加えるときは、初回の出荷前に輸送事業者や通関の専門家と確認します。

 

4. 修理・交換の往復を標準プロセスにする

故障品を海外の修理拠点へ送り、修理品を再び輸入する流れを毎回個別に手配すると、時間も手間もかかります。次の3点をあらかじめ決めておくと、機器が使えない期間を短くできます。

  • 返送と再輸入の手順、書類、輸送手段
  • 修理中に利用者が困らないための代替機の扱い
  • 交換部品を国内に置くか、必要なときに輸入するか

 

5. 小さな検証から始める

輸入物流を一度に切り替えると、リスクも大きくなります。まずは欠品や滞留が起きやすい品番を選び、輸送方法を変えて効果を測るのが現実的です。在庫日数、欠品の件数、緊急手配の回数、総コストなどを比較指標にすると、社内の合意も得やすくなります。

まずは次の問いで、自社の現状を確認してみてください。

  •  欠品を恐れて多めに持っている輸入品はどれか
  • 発注から入荷までの日数とそのバラつきを把握しているか
  • 海外修理の往復に何日かかっているか
  • 通関に時間がかかった経験のある商材や仕入れ先はあるか

 

DHL Expressが支援できること

海外製品の輸入では、輸送手段の選び方だけでなく、次のような点もあわせて検討する必要があります。

  • 在庫をどこに、どれだけ持つか
  • どの商材をどの輸送モードで運ぶか
  • 通関に必要な情報をどう海外の出荷元と共有するか
  • 修理品や交換部品をどう往復させるか

 

DHL Expressは、世界220以上の国・地域を結ぶ国際エクスプレスネットワークで、介護用品・福祉機器の輸入を支えています。特に次のような場面でお役立ていただけます。

  • 海外の出荷元からの小分け輸入:海外のメーカーや工場から日本の拠点まで、ドア・ツー・ドアで一貫して輸送できます。需要に応じた小ロット・多頻度の補充にも活用できます。
  • 重量のある貨物の輸送:重量貨物向けの「Heavy Weight Express」を世界220以上の国・地域で提供しています。1梱包あたり最大1,000kg、運送状1枚あたり最大3,000kgまでの貨物に対応しています。
  • 通関の事前準備:MyGTSでHSコードの検索、通関に必要な書類の確認、禁止・制限事項の把握、総費用の見積もりが行えます。
  • 修理品・交換部品の往復:海外の修理拠点との返送や再輸入、急ぎの部品の調達を、一緒に検討します。
  • 輸送状況の可視化:MyDHL+で輸送状況を確認でき、販売店や施設への入荷見込みの説明をしやすくします。

 

輸送モードの選択が在庫と資金効率に与える影響を可視化する

輸送コストだけを見て海上輸送を選ぶと、リードタイムが長くなる分だけ在庫が増え、資金が固定されることがあります。反対に、航空輸送で小分けに輸入すれば、在庫を圧縮して市場の変化に柔軟に対応できるケースもあります。

輸送手段の比較では、運賃だけでなく、在庫水準やキャッシュフローへの影響も含めて検討することが重要です。ただし、その影響を社内で数字にするのは簡単ではありません。

DHL Expressでは、輸送モードの違いが在庫や運転資金に与える影響をシミュレーションできるツールをご用意しています。現在のリードタイムや販売数量、在庫の持ち方をもとに試算し、経営層やサプライチェーンの責任者の方と、輸送モードの見直しを数字で検討できます。

なお、リチウム電池を含む商材や医療機器に該当する商材は、出荷元の国や商材の仕様によって輸送条件が異なります。貨物の大きさや重量、出荷頻度によっては、海上輸送など他の輸送手段と組み合わせるほうが適している場合もあります。

 

まとめ:在庫の量ではなく、リードタイムで備える

国内の介護を支える介護用品・福祉機器の供給は、海外との取引に大きく支えられています。長く読みにくい輸入リードタイムは安全在庫を膨らませ、欠品と過剰在庫を同時に生みます。

需要予測の精度を上げるだけでは、この課題は解消しません。商材の特性に合わせて輸送モードを組み合わせ、小分けの輸入で補充のリードタイムを短く安定させること。通関に必要な情報を出荷前にそろえ、修理品の往復を標準化すること。こうした取り組みは、在庫の削減、キャッシュフローの改善、欠品リスクの低減につながる可能性があります。まずは欠品や滞留が起きやすい品番から、自社の輸入物流を見直してみてはいかがでしょうか。

 

介護・福祉機器お問い合わせ

介護用品・福祉機器の輸入に関するご相談

  • 輸入品の在庫を見直し、キャッシュフローを改善したい
  • 航空輸送と海上輸送の最適なバランスを知りたい
  • 海外の仕入れ先からの輸入条件を確認したい
  • 海外修理拠点との往復を短くしたい
  • 輸入物流について相談したい

こうしたご要望をお持ちの場合や、貴社の物流課題・海外展開についてご相談をご希望の場合は、DHL Expressまでお気軽にお問い合わせください。

 

 

よくあるご質問

医療機器に該当する商材を輸入して販売するには、薬機法に基づく製造販売業許可などが必要です。輸入通関時には許可証などの写しを税関に提出します。商材ごとの区分は、担当の行政機関や専門家に確認してください。

商材ごとにHSコード、必要書類、許可証の写し、電池の情報を一覧にし、海外の出荷元と共有しておくことが基本です。新しい商材や仕入れ先は、初回の出荷前に確認すると安心です。

条件を満たせば輸送できる場合があります。電池の種類や容量、製品への組み込み方によって、申告や梱包の要件が変わります。海外の出荷元とも要件を共有しておくことが大切です。

運賃の単価では、海上輸送より高くなるのが一般的です。ただし、保管コスト、売れ残り、欠品時の緊急手配、販売機会の損失を含めた総コストで比べると、商材によっては合理的な選択になります。

修理目的の返送と修理品の再輸入では、通常の取引とは異なる書類や手続きが必要になることがあります。手順をあらかじめ標準化し、代替機の扱いも決めておくと、機器が使えない期間を短くできます。

欠品や滞留が起きやすい品番、需要の変動が大きい品番、小型で高額な品番から検討するのが現実的です。少数の品番で試し、在庫日数や総コストの変化を確かめてから広げると、リスクを抑えられます。

目安を把握することはできます。現在のリードタイムや販売数量、在庫の持ち方をもとに、輸送モードの選択が在庫や資金効率に与える影響を可視化します。実際の効果は商材や条件によって異なるため、物流戦略を検討するための目安としてご活用ください。