国によって医療機器の定義や輸入規制が異なります。製品分類、必要書類、商品説明の内容を事前に確認しておくことが、通関をスムーズに進める第一歩です。
家庭用医療機器を海外へ輸出する際に知っておきたい、国ごとに異なる規制・通関対応、需要変動への対応、返品・修理などの物流課題を解説。海外展開を支えるサプライチェーン設計のポイントをご紹介します。
血圧計、体温計、ネブライザー、低周波治療器、美顔器。家庭用医療機器の売り場は、この数年で広がりを見せています。高齢化やセルフケアへの関心の高まりを背景に、家庭で健康状態を管理する機会は増えています。さらにECやD2Cモデルの普及によって、メーカーや販売事業者は以前より海外の消費者へ直接アクセスしやすくなりました。
一見すると、追い風の多い市場に見えます。家庭で健康状態を測る、あるいはセルフケアを行うという習慣は、以前より身近なものになりました。自分の体調を日々把握したいというニーズは、日本国内だけでなく海外の多くの市場でも見られます。
この市場を支えているのは、自社工場や大規模な物流網を持つ大手メーカーだけではありません。海外の工場に製造を委託し、自社ブランドとして企画・販売する中小企業やスタートアップも参入しています。Shopifyや楽天、Amazonなどを通じて、自社倉庫を持たずに海外から直接出荷するビジネスモデルも見られます。
けれども実際には、この業界を担当する物流の現場では、同じ悩みを抱える企業が少なくありません。
「欠品はどうしても避けたい。でも、在庫はこれ以上増やしたくない」
一見矛盾したこの悩みこそが、家庭用医療機器という業界の難しさを言い当てています。売れ行きが伸びていても、その伸び方を正確に予測することは容易ではありません。SNSや販促をきっかけに突然売れ始めることもあれば、期待したほど動かず在庫だけが残ることもあります。
そこに、医療機器としての規制、国ごとに異なる通関要件、精密機器ゆえの品質管理、そして返品や修理への対応まで折り重なってきます。欠品と過剰在庫という一見正反対の課題が、同じ企業の中で同時に発生してしまうのは、決して珍しいことではありません。
家庭用医療機器は、単なる「医療機器」でも単なる「消費財」でもありません。医療機器としての側面を持ちながら、消費者向け製品として多様な販売チャネルで展開されるという、特徴のある商品です。
医療機関向けの医療機器と比べ、家庭用製品では、EC、量販店、直販サイト、代理店など、より多様な販売チャネルを持つケースがあります。さらに越境ECによって、海外の消費者へ直接販売するケースもあります。
こうした複数チャネルという構造自体が、在庫管理を難しくしている面があります。同じ製品でも、チャネルごとに求められる納品単位もタイミングも異なります。
例えば、
といったように、販売チャネルによって物流の要件は大きく異なります。
売れ筋商品を欠品させないためには十分な在庫が必要ですが、積みすぎればキャッシュフローを圧迫します。商品サイクルの短い美容機器などでは、商品価値が変化するリスクもあります。
こうした変化に対応するため、供給計画も以前より短いサイクルで見直す必要が生じています。市場が成長すればするほど、物流にはより高度な柔軟性が求められるようになっているのです。
家庭用医療機器の海外展開において、見落とされやすいのが規制対応です。「問題なく出荷できるはずだ」と考えていても、通関段階で追加確認や書類提出を求められるケースがあります。
その理由の一つが、国によって医療機器の定義や規制が異なることです。家庭用医療機器には、医療機器として規制される製品だけでなく、製品の仕様や用途、表示・広告内容などによって異なる規制の対象となるものもあります。
日本では医療機器に分類されない商品でも、輸出先の国では医療機器として扱われ、追加の確認や書類提出が必要になる場合があります。
ある美容機器メーカーの事例では、美容機器として輸出した製品が、輸出先国の税関で医療機器として判断され、追加の認証書類を求められたケースがありました。その結果、出荷が5日から10日ほど止まる事態となりました。
こうした問題は、輸送中に突然発生するものとは限りません。出荷前に、例えば以下の情報を整理しておくことが重要です。
どこまで事前に準備できているかが、通関をスムーズに進めるうえで重要になります。
求められる書類の考え方は輸出先の国によって変わりますが、通関遅延を防ぐための書類準備のポイントはこちらをご覧ください。
同じ「家庭用医療機器」というくくりの中でも、製品によって物流の難しさの質は異なります。
たとえば、血圧計のように日常的な健康管理に使われる製品と、美容目的で使用される機器では、需要変動や規制上の確認ポイントも異なります。美容機器では、製品の用途や仕様、表示・広告内容などによって、適用される規制や確認事項が変わる場合があります。
同じ倉庫、同じ物流網の中に、性質の異なる商品が混在している。この事実こそが、家庭用医療機器のサプライチェーン設計を一筋縄ではいかないものにしています。
多くの企業が需要予測の精度向上に取り組んでいます。もちろん重要な取り組みですが、家庭用医療機器市場では、それだけでは対応しきれないケースもあります。
健康意識の変化、季節要因、新商品の投入タイミング、SNSでの話題化、インフルエンサーによる紹介など、需要を変化させる要因は多岐にわたります。その結果、売れる商品は欠品し、売れない商品は在庫として残る、という状態が同時に起きることがあります。
ここで重要なのは、予測をより正確にすることだけではありません。需要が変化したときに、必要な場所へ必要な量を迅速に動かせる供給体制を作ることです。
言い換えれば、この市場では「予測力」だけでなく「対応力」が競争力を左右します。
市場の変化を完全に予測することが難しいのであれば、変化することを前提にサプライチェーンを設計する。それが、家庭用医療機器市場に求められる発想の一つです。
家庭用医療機器では、販売後の物流も同じくらい重要な意味を持ちます。
初期不良による交換、修理品の回収、代替機の発送、部品の供給。これらはすべて物流の一部です。
特にEC販売では、購入体験のすべてがブランド評価につながります。消費者は商品の性能だけでなく、「予定通り届いたか」「交換対応は早かったか」「問い合わせにすぐ対応してもらえたか」といった購入後の体験も含めて、商品やブランドを評価します。
この構図は、代理店や医療機関を介して販売する製品でも変わりません。むしろ、修理品が海外の製造拠点まで戻り、代替機や部品が現地の販売網を通じてエンドユーザーの手元に届くまでの経路が長くなるぶん、対応の遅れが販売網全体のサービス品質に影響する場合もあります。
家庭用医療機器の販売後に発生する物流には、例えば次のようなものがあります。
近年増えているバッテリー搭載製品では、この返送プロセスにも注意が必要です。
実際に、バッテリー内蔵製品について必要な申告が事前に行われておらず、航空輸送の手続きに追加対応が必要となったケースもあります。輸送方法や申告内容を誤ると、余計な遅延やコスト増加につながりかねません。
詳しくは、バッテリー搭載製品を海外へ発送する際の注意点はこちらをご覧ください。
だからこそ家庭用医療機器業界では、出荷物流だけでなく、回収・交換・修理まで含めたリバースロジスティクスの設計そのものが、重要なテーマになりつつあります。
家庭用医療機器の物流では、単に「運ぶ」だけでは十分ではありません。企業が必要としているのは、規制や品質要件を踏まえたうえで、サプライチェーン全体を考えられる物流パートナーです。
出荷前の段階では、各国の規制や通関要件を踏まえてインボイスや商品説明を整理し、書類の不備によるトラブルをあらかじめ減らしておくことが重要です。
輸送の段階では、精密機器やバッテリー搭載製品を適切に取り扱い、荷物の状況を確認できる仕組みが求められます。
そして販売後の段階では、初期不良の交換や修理品の回収、代替機の再配送までを含めて物流を設計できるかどうかが、最終的に消費者へ届くサービス品質を左右します。
こうした専門知識は、社内に法務や貿易実務の専任担当を置ける大手企業だけのものではありません。むしろ、規制の確認や通関書類の整備に割ける人手が限られている中小企業やD2Cブランドほど、外部のパートナーがどこまでサポートできるかが重要になります。
自社倉庫を持たず海外の在庫から直接消費者へ届けるようなビジネスモデルでは、通関で一度止まってしまうだけで販売機会を失う可能性もあります。
市場の成長に伴う物流の複雑化を、現場の運用努力だけで乗り切るのは容易ではありません。これからは、物流設計そのものが、企業規模を問わず競争力の一部になっていくと考えられます。
これから海外展開を検討している企業にとっても、すでに複数の国で販売している企業にとっても、問われていることは同じです。
目の前の一件の出荷を無事に届けることと、そのために必要な体制を仕組みとして持っておくこと。この両方を満たせるかどうかが、家庭用医療機器という市場で長く海外展開していくための重要なポイントになります。
DHL Expressは、ライフサイエンス・ヘルスケア分野で培ったグローバルネットワークと知見を活かし、各国の規制や通関要件を踏まえた出荷前の確認から、精密機器やバッテリー搭載製品の輸送、そして返品・修理を含めたアフターサービス物流まで、家庭用医療機器を扱う企業の海外展開をサポートしています。
医療機器の輸出入、越境EC、リチウム電池搭載製品の輸送、通関対応、アフターサービス物流について課題をお持ちでしたら、ぜひDHL Expressへご相談ください。
180以上の国・地域をカバーするメディカルエクスプレスとグローバルネットワークを活かし、貴社のサプライチェーンに合わせた物流ソリューションをご提案します。
国によって医療機器の定義や輸入規制が異なります。製品分類、必要書類、商品説明の内容を事前に確認しておくことが、通関をスムーズに進める第一歩です。
必ずしも同じではありません。日本では医療機器に分類されない商品でも、国によっては医療機器として規制対象になる場合があります。製品の仕様や用途、表示・広告内容などを含め、販売先の国で適用される規制を事前に確認することが重要です。
航空輸送では危険物規制の対象となる場合があり、適切な申告、梱包、ラベリングなどが必要です。製品の種類や電池の仕様によって要件が異なるため、事前に確認することが重要です。
家庭用医療機器は消費者向け製品でもあるため、配送や返品・交換対応まで含めた購入後の体験が、レビューや再購入など、ブランドに対する評価に影響するためです。