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在庫コントロールで物流を最適化せよ! 物流担当者が実行すべきサプライチェーン・マネジメント

※本記事は外部専門家による寄稿です。

 著者:合同会社Kein物流改善研究所  代表社員 仙石恵一


 

物流の現場では、在庫をどう管理するかが日々の業務の質を大きく左右します。これまで多くの企業の改善を支援してきた物流改善研究所の知見をもとに、在庫コントロールを手がかりに、物流最適化を考える際のポイントを紹介します。

1.はじめに

皆さんは「物流」という言葉をお聞きになった時に真っ先に頭に浮かぶものは何でしょうか?

多くの方は物流というと「トラック」をイメージするようです。物流2024年問題という言葉が有名になりましたが、実際には「運送2024年問題」でした。つまりここでも物流=運送という捉え方をされていたということです。

私は物流とは、と聞かれると「在庫管理」だと回答します。在庫管理の中でも特に在庫をコントロールすることが物流の本業であると考えています。

物流に携わる方たちが皆この考え方を持っていただければ、物流を取り巻く状況は変化するものと確信しています。そこでこのテーマに基づき、これから解説していきたいと思います。

2.物流担当者の必須スキルとは

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物流に携わる方は、ほぼすべての業界にいらっしゃるのではないでしょうか。物流業は当然のこととして、製造業や小売業、卸売業からサービス業にいたるすべての業界で「もの」がある限り、それを保管したり動かしたりする行為が発生します。そして「もの」があればその在庫管理が発生します。このすべての業界の物流担当者に必須となるスキルとは何でしょうか。それはズバリ「生産管理」です。

「生産管理って製造業での管理のことでしょ。ウチは小売業だから関係ないよ」このように言う方もいらっしゃるかもしれません。でも小売業でも商品を仕入れたり、その在庫を管理したり、店舗の必要人員を決めたりしていますよね。実はこういった業務はすべて生産管理に含まれるのです。そう、知らず知らずの内に生産管理を使っているのです。

では、なぜ生産管理が物流担当者の必須スキルなのでしょうか。ここからは、サプライチェーンの各機能が備わっている製造業を例に考えていきます。

もし工場の資材担当者が、たまたま市況が安いからと言って、今必要とされる数量を大きく上回る数量の資材を仕入れたとしましょう。するとどうでしょう。工場にその資材を置ききれなくなることが考えられます。そうなると、工場の物流担当者は工場の中でその資材を置ける場所を探し回ります。少しでも場所があれば、それらの場所に資材を分散して置くことになるかもしれません。そうなると、それらの管理や工場内での不要な運搬が発生することもあるでしょう。最悪、工場内に置ききれず、外部の倉庫を借りて保管することだって出てくる可能性があります。資材担当者が、市況が安いからと買ったつもりの資材ですが、その管理のために、その得した分が吹っ飛んでしまい、逆に物流コストとしてさらなる金額が発生していることがあります。しかも、その事実に気付かない場合が大半です。物流担当者は予期せぬ物流コストを発生させたために、それを何とかせよ、と指示されるかもしれません。でも物流だけで解決できる問題でしょうか。いいえ、物流はあくまでもいくつかの行為の結果として発生することが一般的です。この事例では「ものの買い方」を改善しなければ、物流が良くなることはありません。

このような物流に影響を与える事例は”ものづくり”でも発生します。生産担当者が計画以上の生産を行えば不要な在庫が発生し、それを入れる容器や置場所が不足します。容器や置場と言えば、物流機能と考えられますから、物流担当者が臨時荷姿をつくったり、先ほどの資材と同様、置場を探し回ったりしています。

物流担当者は、一般的に他部署から依頼されれば、それを愚直に実行することが多いようです。ですから上記のような事例が発生しても何とかそれを処理しようと必死になるわけです。

しかし、これでは「問題が隠れて」しまい、会社にとって決して良いこととは言えません。先ほどの資材に関する件は「調達管理」、ものづくりについては「生産進捗」という生産管理の一機能なわけです。物流担当者は言われるままの仕事をするのではなく、なぜその仕事が発生するのかについて理解を深め、該当部署に正すべきことはフィードバックすることが必要なのです。だから物流担当者は生産管理を学び、その知識を身につけ、おかしいところを変えていくタスクを負っているのだという認識を持たなければなりません。

3.物流担当者は在庫発生のロジックを学ぼう

私は冒頭で物流とは在庫管理である旨書かせていただきました。その理由とは物流が発生する背景には在庫があるからです。在庫があるから容器が必要になります。在庫があるから保管スペースが必要になります。在庫があるから運搬が発生します。在庫があるから管理が発生します。これら容器、スペース、運搬、管理は物流の一部であり、在庫とともに発生するのです。

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ここで簡単な在庫発生ロジックについて考えてみましょう。まず資材や部品などを仕入れた時の在庫について。これを調達在庫と呼びましょう。この在庫は仕入れた直後が最大となります。この調達在庫は正確に言うと調達ロット在庫(図1)と呼ばれます。調達頻度が多ければこの在庫は小さくなり、逆に頻度が少なければ大きくなります。これ以外に生産が上方に振れたり、サプライヤーの未納があったりすることを想定した安全在庫を保有しているかもしれません。つまり安全在庫を減らすためにはその要因である生産の波動やサプライヤーの未納を改善する必要があるのです。

次に生産工程の在庫について考えてみましょう。2つあります。1つは工程間仕掛在庫、もう1つが完成品在庫です。工場がジョブショップ型生産(図2)を行っている場合には原則として一定の工程間仕掛が発生します。ジョブショップ型生産とは内径加工や歯切り加工などを専門で行う工程を設定します。

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そしてその工程で生産が終了し、次工程に運ばれる前の在庫を仕掛在庫と呼びます。これと対極にあるものがフローショップ型生産です(図3)。これは生産工程を一定の流れをつくって並べ、その順番で生産を行っていく方式です。代表的なものに自動車組み立てがあります。この場合、工程間仕掛は発生しないか極めて少ない量だけにとどまります。ジョブショップ型では各工程の生産スピードが異なると速い工程の後ろに在庫が溜まります。この仕掛在庫を減らすためには各工程のスピードを合わせることや、その在庫を入れる容器や台車の数を制限することが考えられます。

各工程で複数種類の製品や部品を生産している場合、機械の切り替えが発生します。生産部署はこの切り替えで生産が止まることを嫌がり、一定の数量をまとめて生産したいと考えます。そうなるとすぐに使わない、あるいはすぐに出荷されない在庫が滞留することになります。

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この在庫のことを生産ロット在庫と呼びます。この生産ロット在庫を減らすためには、機械の切り替えを小刻みに実施することが求められます。そのためには機械の切り替え時間を短縮する改善が必要となります。

物流担当者は、以上のような在庫発生のロジックを知ることで各部署へ働きかけ、在庫をコントロールするために一定の貢献をすることが可能となります。自分たちの余分な仕事の発生を防ぐためにもロジックを知り、熱意をもって在庫コントロールに関わっていきましょう。

4.調達品の在庫コントロールのポイント

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先ほど資材や部品などを仕入れた時の調達在庫の話を書かせていただきました。生産や販売のタイミングに先立って仕入れますが、これが早すぎると生産や販売に着手するまでの間、ずっとその在庫を保管し続けることになります。この「調達タイミング」が一つの在庫コントロールのポイントになります。

在庫を減らす観点からのキーワードは「ギリギリに」です。つまり生産開始直前に仕入れる、販売する直前に仕入れる、こういうことになります。ギリギリの度合いをどうやって示しましょうか。生産や販売の何時間前に仕入れるかを1つのKPIで示すと良いでしょう。これを「先行度」と呼ぶことにしましょう。例えば生産着手の6時間前に工場に到着するのであれば「先行度=6」ということになります。この数字を小さくすればするほど「ギリギリ」に近づくことになり、その分在庫が少なくなります。

もう一つの在庫コントロールの視点が先に記した「調達ロット」です。1回で仕入れる量が調達ロットになります。例えば部品を1,000個単位で仕入れるのであれば調達ロット=1,000ということになります。これも在庫を減らす観点ではロットが小さければ小さいほど望ましいということになります。調達ロットを縮めるためには調達頻度を高める必要があります。何も手を打たずに頻度だけ高めれば、物流コスト上昇につながりやすいということは事実です。そこでこのコスト上昇を抑える方策についてもセットで考えなければなりません。今回は紙面の都合でコストについて触れることはできませんが、調達頻度を高めて在庫を減らすとともに物流コストも増やさない方策があるということだけをお伝えしておきましょう。

実はもう一つ調達在庫コントロール上で重要な視点があります。それは調達容器の「入数」です。つまり容器の中に入れる部品などのものの数の妥当性です。ものの調達は原則として「使う分だけ」仕入れるということは言うまでもありません。では「使う」という行為の単位についても考えてみる必要があります。たとえば「1日に400個使う」なのか、「半日で200個使う」のかについて検討する必要があるということです。さらにその「使い方」についても考える必要があります。1日に400個使うにしても、それを日に1回で使い切るのか、4回に分けて使い切るのかで容器の入数は変動させるべきだと思います。それは何故でしょうか。

工場の例で考えてみましょう。工場では生産ロットという概念があります。これは先に記した調達ロットと同じ考え方で「1回で生産する量」が生産ロットということになります。1日に1回で400個生産するのであれば、生産ロットは1回ということになります。400個を100個ずつ4回に分けて生産するのであれば、生産ロットは4回になります。ではその生産ロットの大きさはどうなりますでしょうか。前者は400個であり、後者は100個ということになります。これを生産ロットサイズと呼びます。

さてここで容器の入数の話に戻ります。この例で前者では入数は400個で良いかもしれません。その容器を1回供給すれば、その生産が終わる時に1個の空容器が発生しますので、それを処理すれば良いことになります。では後者ではどうでしょうか。仮に400個入りの容器だとすると、最初の生産で100個使いますので、生産終了時点で容器の中に300個の部品が残ることになります。在庫の発生です。ものづくりのありたい姿から言うと、今不要な部品を生産工程に放置しておくことは良くないため、構内物流の担当者はその容器を物流倉庫に引き上げることになります。では入数を100個だとしましょう。そうすると生産タイミングで1容器だけ届け、使い終わった空容器を引き上げます。これを日に4回実施します。構内物流の行為としては供給4回、引き上げ4回で変わりません。ちなみに容器の大きさが小さい方が生産工程にとって望ましいと考えられます。この場合、100個入り容器の方が小さくなります。

では少し視点を広げて生産数が増えたとしましょう。1日の生産数が500個になったとします。もし入数が400個であれば2箱で800個を調達することになります。つまり1回の生産終了時点で300個余剰在庫が発生することになります。では入数が100個だったらどうなるでしょうか。この場合、調達数は500個で済みます。100個入り容器を5箱調達するだけですから。このように容器の入数も使う数に見合った数にすることで余分な在庫の発生を防ぐことができるのです。

5. 生産品の在庫コントロールのポイント

生産品の在庫コントロールは「調達品の在庫コントロール」と一緒です。キーワードは生産タイミング、生産ロット、容器の入数です。

在庫を減らす観点からは生産タイミングはできるだけ出荷ギリギリで、生産ロットはできるだけ小さく、容器の入数も出荷個数と出荷タイミングに合わせて設定していくことが望ましいと考えられます。

皆さんは多頻度少量という言葉をお聞きになったことがあると思います。これは一般的にジャスト・イン・タイムと言われます。ジャスト・イン・タイム生産とは「ちょうど間に合う」ように生産するという意味です。つまりお客様に対してギリギリに要求された数だけつくって渡すことが望ましいと考えられているのです。そのためにまとめて生産するのではなく、少しずつ、お客様が欲しいタイミングで生産することが必要です。

後は上記3の中で説明した通りのことを愚直にコントロールしていくことで、生産品のコントロールができるとともに製品が出来上がるまでの工程間仕掛在庫のコントロールが可能となるのです。

6.グローバル調達と在庫管理

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在庫をコントロールするうえで、それを一定数持たざるを得ないと考えられるものがグローバル調達品の在庫です。今や日本企業といえども海外拠点があることは当たり前、海外から部品などを調達したり、海外拠点に輸出したりすることも普通に行われていると思います。

1つ輸入を考えてみましょう。皆さんは海上コンテナ輸送でものを輸入調達しているケースが多いのではないでしょうか。この時に悩ましいことは在庫が増えるということでしょう。なぜなら皆さんはコンテナいっぱいにものを調達するからです。これは海上輸送コストを考えるとできるだけまとめて運びたいと考えますよね。ここで増えるのは輸送ロット在庫です。船がデイリーで走っていれば良いのですが、週に1便だと1週間分まとめて調達しなければならないのです。ちなみにコンテナの中で海上輸送されているものも在庫です。輸送リードタイムが長いとその分だけ海上にある在庫も増えるということになります。

では、そのグローバル調達品の在庫管理をどのように実行していますでしょうか。私の知る多くの企業では、工場内に置ききれずに外部倉庫を賃借し、そこから必要に応じジャスト・イン・タイムで引き込んでいます。ここで外部倉庫の賃借料、倉庫内でのオペレーション費用、工場までの輸送費用が発生しています。輸入に関わる海上輸送費、荷揚げ後の倉庫まで輸送するドレージ費を含めてトータルで考えた時に、今の物流方法がベストなのかについては一度考えてみても良いかもしれません。併せて外部倉庫にある在庫は毎日目にすることはないでしょう。今の在庫量が妥当だということについて確信をもって言えるようにしたいものです。

7.物流担当者が気にかけるべきこと

物流担当者の皆さんには生産管理をきちんと学んでいただくとともに、在庫発生のロジックを知り、自ら在庫コントロールするか在庫責任部署に働きかけることを実行していただきたいと思います。余分な在庫を持たないことで物流コストを下げられたり、会社のキャッシュフローの改善ができたりするのです。

併せて検討していただきたいことがあります。世の中の多くの会社が物流業務を外注化しています。輸送や倉庫保管業務などはその典型です。物流管理業務を自社で実施し、物流作業を外注化することが一般的です。しかし最近では3PLという業種があることをご存じでしょうか。3PLとはサードパーティー・ロジスティクスの略称です。3PLの定義は「荷主の物流業務を包括的に請け負い、荷主に物流改革を提案する業種」ということです。かなりハードルが高そうですね。もう少し簡略化してみましょう。それは物流作業とともに物流管理業務を請け負う業種と言えそうです。もし皆さんが実施している物流管理業務の全部、または一部を外注化できたとしたらいかがでしょうか。

今まで解説してきた在庫コントロールの視点から考えると、在庫を適正な数量にキープするために在庫が一定数を切ったら調達指示を出す。これをできるだけ多頻度少量で実行することで在庫増にキャップをはめる。そして日々の在庫を適正に保つことに寄与できる、外注先に業務を任せるということです。物流管理業である「頭」の部分と、物流作業である「手足」の部分を持ち合わせた会社だと楽かもしれません。皆さんにはこれができる会社と取引することをお勧めします。いろいろな会社の人と話をしてみましょう。ざっくばらんに在庫の悩みをぶつけてみましょう。これに回答できる物流ソリューションを持っている会社を選ぶことが望ましいのです。

可能であれば調達から生産、出荷までのサプライチェーン・マネジメントを一気通貫でできる会社がベストです。今や各工程個別最適ではなく、サプライチェーン全体の最適化が必要になるからです。物流はサプライチェーン全てのプロセスに絡みますので、その最適化にはうってつけの機能です。繰り返しになりますが、その中で最重要な項目が「在庫」なのです。生産管理を熟知し、管理面でもオペレーション面でも「在庫コントロールができる会社」が優良物流会社のキーワードだと言える理由はここにあるのです。

8.最後に

いかがでしたでしょうか。物流を担当されていらっしゃる方が本来取り組まなければならないことについて、ご理解いただけたのではないでしょうか。物流はズバリ「在庫管理」です。運搬や保管というオペレーション機能にばかり目が行きがちですが、それらが発生する背景には在庫があるのです。この在庫をコントロールすれば物流は劇的に効率化できます。それをサプライチェーン・マネジメントという全体の流れを管理する手法で実行する必要があるのです。まず生産管理の知識を学びましょう。なぜ在庫が発生するのかを知り、その源を改善することをお勧めします。

著者

著者:合同会社Kein物流改善研究所  代表社員 仙石惠一

経歴:慶応義塾大学経済学部卒業

1982年〜2001年 日産自動車株式会社。生産管理、物流管理、購買管理

2001年〜2004年 ルノー・日産共同購買会社出向Renault Nissan Purchasing Organization DGM

2005年〜2007年 東風日産乗用車公司(中国、広州市)出向、サービスサポート購買部 副部長。

2008年〜2012年 ユニプレス株式会社、生産管理部主管、監査室長、総務部長。

2013年 Kein物流改善研究所設立。


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