EC市場の拡大とともに、消費者の間ではよりスピーディーな配達への期待が一層高まっています。その一方で、物流は世界のCO2排出量の約3分の1を占める要因となっており、環境負荷の低減は喫緊の課題となっています。こうした状況を背景に、消費者はEC企業に対し、利便性だけでなく、環境に配慮した配送やサステナブルな取り組みを強く求めるようになっています。
このような潮流の中、「脱炭素」や「サステナブル物流」は、もはや企業経営における重要なテーマのひとつとなっています。
本記事では、カーボンニュートラルを目指す企業に向けて、EC業界におけるCO2排出の主な要因を整理するとともに、環境に配慮した輸送の具体例、さらにDHL Expressが提供する環境ソリューションについてご紹介します。
EC業界でCO₂排出量が増える主な要因
まずは、自社のカーボンフットプリントを削減する前提として、EC業界で排出量が増加する主な要因を洗い出してみましょう。(カーボンフットプリント((企業活動に伴うCO2排出量))とは、事業活動によって直接的・間接的に排出される温室効果ガスの総量を指します。)
1. 非効率な梱包
標準サイズの箱に余分な空間を残したまま出荷するケースは少なくありません。これにより廃棄物が増えるだけでなく、輸送効率が下がり、CO₂排出量も増加してしまいます。さらに、プラスチック製の梱包材や緩衝材などは、製造時に多くのエネルギーを消費し自然分解にも長い時間を要します。
2. 衝動買い
割引や特典による購買促進は売上の向上に寄与しますが、過剰な消費に対応するため生産量の増加を招き、その分CO2排出量も増えてしまいます。
3. 返品の多発
返品が無料かつ容易な場合、消費者は複数商品を購入して一部を返却する傾向が高まります。結果として、往復の輸送が発生し環境負荷が増大してしまいます。
4. 高消費電力デバイスの普及
オンラインショッピングなどスマートフォンを中心とした消費が拡大し、より高性能な処理能力やバッテリーが求められることで、エネルギー消費全体が押し上げられています。
5. 大型データセンター
オンラインショッピングの拡大は、処理・保存・検索が必要となるデータ量の増加も引き起こしています。その結果、膨大なエネルギーを消費する大規模なデータセンターが必要となり、さらに、別の場所に設置されたミラーサーバーもその負荷を一層増大させています。
6. スピード重視の輸送手段
気候変動への配慮に対する意識が高まる現在においても、消費者は依然として、購入した商品をできるだけ早く受け取りたいと考えています。特に越境ECでは、そのニーズが航空輸送の利用につながることが多く、大きなカーボンフットプリントを伴います。
越境EC企業が取り組むべきカーボンフットプリント削減9つの方法
これらの課題を認識した上で、ここからは企業が今すぐ取り組める具体策をご紹介します。
1. カーボン排出量を可視化する方法
最初の一歩は、自社の排出量の把握です。サプライチェーンにおける排出量は以下の3つに分類されます。
スコープ1排出量(Scope 1 emissions)
スコープ1排出量とは、企業が自社の事業活動において直接排出する温室効果ガスを指します。これには、自社が保有・管理する車両からの排出や、事業所内での燃料使用に伴う排出などが含まれます。スコープ1排出量の削減は、自社のオペレーション内部において、排出源そのものに対する直接的な削減対策を講じることを意味します。
スコープ2排出量(Scope 2 emissions)
スコープ2排出量とは、企業が購入したエネルギーの使用に伴って間接的に発生する温室効果ガス排出量を指します。主に、電力や熱(暖房・冷房など)の使用による排出が該当します。スコープ2排出量の低減にあたっては、再生可能エネルギーの活用や、エネルギー効率の向上を通じた使用量削減が重要となります。
スコープ3排出量(Scope 3 emissions)
スコープ3排出量とは、自社の事業活動に関連しながらも、自社の直接的な管理下にはないバリューチェーン全体で発生する温室効果ガス排出量を指します。これには、サプライヤーによる原材料調達、製造過程、物流、ならびに顧客による製品・サービスの使用などが含まれます。スコープ3排出量の削減には、サプライチェーン全体における関係者との連携・協働を通じた取り組みが不可欠となります。
グリーンハウス・ガス・プロトコル(GHG)の公式ウェブサイトでは、算定に関する指針や各種計算ツールを確認することができます。また、DHL Expressが提供する環境配慮型ソリューションでは、カーボン排出量の可視化・管理を支援するツールやサービスが含まれており、DHL Expressを利用した輸送において透明性の高い、実務に活用可能なデータを提供します。
2. カーボンオフセットを活用する(補完的手段)
すべての企業活動はカーボンフットプリントを伴います。これは、事業活動によって直接的または間接的に排出される温室効果ガスの総量を指します。
カーボンオフセットとは、森林再生、再生可能エネルギーの導入、クリーンウォーター(安全な水)プロジェクトなどの事業に資金を拠出することで、これらの排出量を「相殺」することを可能にする仕組みです。
ただし近年では、オフセットのみに依存するのではなく、排出そのものの削減や、サプライチェーン内での削減(インセット)を優先する考え方が主流となっています。そのため、オフセットは削減しきれない排出を補完手段として位置づけることが重要です。
3. ペーパーレス化でCO2排出量を削減する
社内業務をより効率的なペーパーレスシステムへ切り替え、請求書や領収書などの書類をデジタルに変換しましょう。DHL Expressでは、ペーパーレス運用を推進するため、電子インボイスや請求管理システムを提供しています。これにより、カーボンフットプリントの削減に加え、紙、インク、そして時間の節約にもつながります。
4. 持続可能な梱包資材へ切り替える
製品に適したサイズの環境配慮型梱包材を使用することで、廃棄物や輸送時の排出量を削減できます。また、複数商品をまとめて梱包することも有効です。
再利用可能、リサイクル可能、または堆肥化可能な梱包材(例:キノコ由来の菌糸体素材や海藻由来素材)などを検討しましょう。やむを得ずプラスチックを使用する場合は、生分解性プラスチックの活用も選択肢となります。
持続可能な梱包材への切り替えは、コスト削減につながる可能性があるだけでなく、環境意識の高い顧客層を惹きつける効果も期待できます。
5. 環境配慮型輸送を選択する
環境配慮型の輸送サービスを体系的に提供している物流パートナーを選ぶことで、EC配送に伴う環境負荷を低減できます。
たとえば、DHL Expressの「GoGreen Plus」は、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)を活用することにより、貨物輸送に伴うカーボン排出量の削減を支援するソリューションです。
SAFは、植物油やバイオマス、廃食用油などの再生可能資源から製造されるバイオ燃料で、従来のジェット燃料の代替として使用できます。従来の化石燃料と比較して、最大80%の温室効果ガス排出削減が可能です。
6. 効率的な在庫管理を行う
サプライヤーと協力してJIT(ジャスト・イン・タイム)方式の導入を検討しましょう。JITの目的は、無駄を排除し、効率性を高めることにあります。原材料は生産に必要なタイミングで到着し、在庫は顧客需要に合わせて補充されますが、それ以上に早くは入庫しません。
これにより、倉庫内に過剰な在庫を抱えることがなくなり、保管に伴うエネルギー消費や陳腐化のリスクを抑えられます。JITの導入は、コスト削減、廃棄物削減、業務効率の向上につながります。
7.サステナブルなサプライチェーンの構築
企業は、サプライチェーンにおけるサステナビリティの重要性をますます認識するようになっています。これは、単にサプライチェーン効率の向上や廃棄物削減、輸送プロセスの改善にとどまりません。
たとえばスポーツ用品大手のナイキは、サプライヤーの環境パフォーマンスを評価・格付けする「サステナブル・マニュファクチャリングおよびソーシング・インデックス」を導入しています。
サステナビリティについて志を同じくするサプライヤーや販売事業者と提携するだけでも、自社のカーボンフットプリントを削減することに貢献できます。
8. サーキュラーエコノミーの導入
リバースロジスティクス戦略を導入することで、製品のライフサイクルを延ばすことができます。これは、返品された破損品を廃棄処分するのではなく、再生、修理して再利用する考え方です。環境負荷の低減と同時に、コスト面でもより効率的なアプローチとなります。
9. 返品率を下げる工夫
製品が返品されるたびに、追加の輸送が発生し、それに伴う排出量も増加します。これを防ぐためには、まず返品率そのものを下げる取り組みが重要です。オンラインショッピングのウェブサイト上で高解像度の製品画像や、動画などでの詳細な商品説明を掲載し、消費者が商品をより正確にイメージできるようにすることで、購入後のミスマッチを減らすことができます。また、宅配ロッカーを返品に活用することも効果的です。複数の顧客の返品荷物を1か所でまとめて回収できるため、輸送回数が減り、全体の排出量削減につながります。
DHLのソリューションで、脱炭素経営を加速
これら9つの施策は、一度に全て実施する必要はありません。段階的な導入と定期的な見直しや改善が現実的なアプローチです。
また、環境への取り組みをオープンに開示し、顧客や消費者と共有することで、ブランドロイヤルティの向上にもつながります。
DHL Expressのビジネスアカウントで、環境に配慮した輸送ソリューションも利用することが可能になります。脱炭素経営を目指す企業にとって、強力な物流パートナーとなるでしょう。
DHLの環境ソリューションについて、詳しくはこちらをご覧ください。