現時点では2026年7月1日からの施行が予定されています。150ユーロ以下の輸入貨物への関税免除が見直され、越境EC貨物に関しては低価額貨物を対象に申告行単位での簡易課税制度の導入が提案されています。ただし、EU理事会・欧州議会での承認プロセスが完了するまで、内容・時期は変更される可能性があります。最新情報は各国税関当局またはDHLにご確認ください。なお、VATについてはすでに2021年7月から150ユーロ以下の貨物にも課税されています。
「この金額以下の輸入品には関税・税金を免除する」というデミニミス(少額輸入免税制度)は、長年にわたって越境ECの成長を後押ししてきました。日本から海外へ商品を発送する事業者にとっても、小口貨物が輸入先で免税扱いになることは、受取人への追加負担がなく、スムーズな顧客体験を提供できるという大きなメリットがありました。
しかし今、その前提が大きく揺らいでいます。
欧米をはじめとする主要市場が相次いでデミニミスの縮小・見直しに動いており、これまで免税で届いていた小口貨物が課税対象へと変わりつつあります。制度変更を把握しないまま発送を続けると、受取人への予期しない請求、返品・受取拒否の増加、そして自社の利益率の悪化につながるリスクがあります。
本記事では、日本からの越境EC輸出事業者が特に注意すべき市場を中心に、最新の制度動向と実務的な対応の考え方を解説します。
デミニミスとは、輸入貨物の申告価額が一定の基準を下回る場合に、関税や消費税(VAT・GSTなど)の徴収を免除する制度です。各国・地域が独自の限度額と計算方式を定めており、統一された国際基準は存在しません。
価額の計算方式には主に2種類あります。
計算方法 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
FOB(本船甲板渡し条件) | 商品価格のみ | 送料・保険料を含まないため、比較的高価な商品でも免税の対象になりやすい |
CIF(運賃・保険料込み条件) | 商品価格+送料+保険料 | 合計額が限度額を超えやすく、課税対象となる貨物が増える傾向がある |
輸出先の市場でどちらの方式が採用されているかによって、同じ商品でも課税・非課税の扱いが変わります。価格設定の前に必ず確認が必要です。
日本からの越境EC輸出において、現時点で最も注意が必要な変化がEUです。
2026年3月26日、欧州議会とEU理事会が正式に合意し、2026年7月1日からの施行が確定しています。EUに輸入される150ユーロ以下の貨物に対する関税免除(デミニミス)が撤廃され、IOSS(輸入ワンストップショップ)に登録しているか否かにかかわらず、すべての越境EC輸入貨物に対して、輸入申告書の申告行ごとに3ユーロの関税が課されます(1つの申告行には関税分類に応じて複数の商品を含められる場合があります)。この3ユーロの関税はEU全体のECフローの約93%をカバーする暫定措置であり、2028年7月までの適用が予定されています。2028年以降はHSコードに基づく通常の関税率に移行する予定です。
なお、VATについては22ユーロ以下のVAT免税枠がすでに2021年7月に廃止されており、150ユーロ以下の貨物にもVATが課税される状態が続いています。2026年7月の変更は、これに加えて関税免除も終了するという点が新しい動きです。
また、欧州委員会は低価額商品に対する新たなEU全域での取扱手数料の適用を提案しており、2026年11月1日までの導入が見込まれています。詳細は確定次第、随時更新される見込みです。
今回の制度変更では、課税の発生だけでなく書類要件の強化も大きなポイントです。150ユーロ以下の低価額貨物(B2BでVAT登録のある輸入を除く)を輸出する際には、以下の3種類の製品識別コードを申告書に記載することが求められる予定です。
制度開始に先立ち、早期からのデータ整備が推奨されています。2026年11月1日以降にEUへ到着する貨物の通関を円滑に進めるためにも、早めの対応が賢明です。
適用除外の条件は複雑であり、自社の取引形態に応じて税務・通関の専門家への確認を強くお勧めします。
米国では2025年、デミニミス制度(800米ドル以下の輸入貨物への関税免除)が廃止されました。
2025年5月より、中国・香港原産の貨物を対象にデミニミスの適用が廃止されました。これにより、中国・香港発の低価額貨物は関税の課税対象となっています。さらに2025年8月29日以降は、制度の適用範囲がすべての国・地域に拡大され、デミニミスは撤廃されました。 米国の関税制度は非常に複雑であり、Section 321(デミニミス特例)、対象国・品目、申告形態によって扱いが異なります。現時点での最新の適用条件については、DHLまたは通関の専門家にご確認ください。 | ![]() |
制度の見直しに伴い、以下の対応が求められるケースが増えています。
米国向けの越境EC事業者には、まず自社商品のHTS分類を確認し、最新の申告要件を把握しておくことをお勧めします。DHLのMyGTS(マイグローバルトレードサービス)では、HSコードの検索・特定をサポートしています。
詳しくは、すでに公開している 米国向けデミニミス対応記事 もあわせてご参照ください。
欧米ほどの大きな変化はないものの、アジア太平洋地域でも各国が越境ECの増加に対応した制度見直しを進めています。代表的な市場の動向を確認しておきましょう。
市場 | 現行の免税限度額(目安) | 動向 |
|---|---|---|
オーストラリア | AUD 1,000(関税) | 75,000豪ドル以上(12か月ベース)の売上を持つ海外事業者にはGST登録義務あり |
韓国 | USD 150相当(関税) | 制度の見直し議論が進行中 |
インドネシア | USD 3(関税) | すでに非常に低い水準に設定済み |
日本 | FOBベース 10,000円 | 財務省が廃止を含む複数案を審議中 |
※ 上記は2026年5月時点の情報をもとにした目安です。各国の制度は変更される場合があります。輸出先の最新情報は、DHLのMyGTSまたは各国税関当局のウェブサイトでご確認ください。
デミニミスが縮小・見直しされると、「商品価格+送料」だけで考えていたコスト構造が変わります。輸出先で関税・税金が発生する場合、それをどちらが負担するかを明確にしないまま発送を続けると、以下のリスクが生じます。
DHLでは、配達先の国で発生する関税の支払いについて、発送人負担・受取人負担のどちらにも対応しており、EC事業者のビジネス運用に合わせて柔軟に選択できます。
条件 | 内容 | 特徴・実務上のポイント |
|---|---|---|
DDP | 発送人(EC事業者)が関税・税金を負担する方式 | DHLが輸入時の関税・税金支払いを代行し、後日事業者へ請求。 |
DDU ※旧Incoterms表現 | 受取人(購入者)が関税・税金を負担する方式 | DHLが通関手続きおよび関税・税金の立替処理を行い、受取人へ請求・回収。 |
どちらの方式が自社のビジネスに適しているかは、販売する商品・市場・価格帯によって異なります。なお、一部の物流会社ではDDPのみ対応となる場合があるため、サービス選択時にはご注意ください。DHLは両方式に対応しています。対応条件は輸出先国や輸送条件によって異なりますので、詳細はDHLまでお問い合わせください。
正確なコスト把握には、DHLのランディングコスト計算ツールの活用をお勧めします。関税・税金を含めた総費用を事前に把握することで、競争力のある価格設定と安定した利益率の維持につながります。
制度変更に伴い、通関書類の精度がより一層重要になっています。税関当局は申告内容の不一致を検出するためのシステムを整備しており、意図的な過小申告は重大なコンプライアンス違反となります。
申告内容に問題があると判断された場合、貨物の差し押さえや追加の罰則が科される可能性があります。また、申告の誤りが繰り返されると、より厳しい税関審査の対象となるリスクもあります。
コマーシャルインボイスの内容確認についてはDHLのコンプライアンスチームがサポートしますが、申告内容の最終的な正確性はお客様ご自身でご確認いただく必要があります。不明な点は税務・通関の専門家にご相談ください。
制度変更が続く中で、物流パートナーの選択が事業の安定性に直結します。DHLでは、越境EC輸出事業者向けに以下のサポートを提供しています。
まずはDHLスペシャリストにご相談の上、現在の輸出先国が制度変更の影響を受けていないかご確認ください。
現時点では2026年7月1日からの施行が予定されています。150ユーロ以下の輸入貨物への関税免除が見直され、越境EC貨物に関しては低価額貨物を対象に申告行単位での簡易課税制度の導入が提案されています。ただし、EU理事会・欧州議会での承認プロセスが完了するまで、内容・時期は変更される可能性があります。最新情報は各国税関当局またはDHLにご確認ください。なお、VATについてはすでに2021年7月から150ユーロ以下の貨物にも課税されています。
はい。米国では2025年5月より、中国・香港原産品を対象にデミニミスの適用が廃止され、現在はすべての国・地域に対象が拡大されています。その結果、低価額貨物であっても関税や税金が課される運用へと変わり、詳細なHTS分類情報の整備や申告書類の充実が求められるケースが増えています。自社商品の分類と最新の申告要件を確認し、準備を進めることをお勧めします。
DHLのMyGTSに搭載された検索機能を使って、品目ごとに適切なHSコードを特定できます。正確なコードの割り当ては、適用税率の確定と免税要件の確認に直結します。不明な点は通関の専門家にもご相談ください。
DHLではDDP(関税込み持込渡し)とDDU(関税抜き持込渡し)の両方に対応しており、事業者のビジネスモデルに合わせて選択できます。いずれの方式でも、DHLが輸入通関および関税・税金の処理手続きをサポートします。DDPを選択した場合は、DHLが関税・税金の支払い手続きを代行し、後日発送人事業者へご請求します。一方、DDUでは受取人が関税・税金を負担するため、事前の案内が重要です。
なお、対応可否は輸出先国や輸送条件によって異なりますので、詳細はお問い合わせください。
EU・米国に加え、日本を含むアジア各国でも制度の見直し議論が進んでいます。規制の動向はDHLのMyGTSや各国税関当局のウェブサイトで確認できます。DHLが規制情報の収集をサポートすることで、お客様は販売と事業成長に注力いただけます。
【免責事項】
本記事に記載の制度・税率・スケジュールは2026年5月時点の情報に基づいています。各国の規制は変更される場合があります。最新情報は各国税関当局または税務・通関の専門家にご確認ください。DHLは税務・法務アドバイスを提供するものではありません。