2026年7月1日から施行されています。150ユーロ以下の輸入貨物の関税免除が撤廃され、越境EC貨物には申告行ごとに3ユーロの関税が課されています。さらに2026年11月1日からは、EU向けB2C貨物へのPIDの提供必須化と、EU税関による取扱手数料の導入が予定されています。なお、VATは2021年7月から150ユーロ以下の貨物にも課税されています。
「この金額以下の輸入品には関税・税金を免除する」というデミニミス(少額輸入免税制度)は、長年にわたって越境ECの成長を後押ししてきました。日本から海外へ商品を発送する事業者にとっても、小口貨物が輸入先で免税扱いになることは、受取人への追加負担がなく、スムーズな顧客体験を提供できるという大きなメリットがありました。
しかし今、その前提が大きく揺らいでいます。
日本からの越境EC輸出で特に注意が必要なのがEUです。2026年7月から、これまで免税で届いていた小口貨物が課税対象になりました。11月からは書類要件と手数料も加わります。制度変更を把握しないまま発送を続けると、受取人への予期しない請求、返品や受取拒否の増加、自社の利益率の悪化につながるおそれがあります。
本記事では、EU向け越境EC輸出事業者が知っておくべき最新の制度動向と、実務的な対応の考え方を解説します。
デミニミスとは、輸入貨物の申告価額が一定の基準を下回る場合に、関税や消費税(VAT・GSTなど)の徴収を免除する制度です。各国・地域が独自の限度額と計算方式を定めており、統一された国際基準は存在しません。
価額の計算方式には主に2種類あります。
計算方法 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
FOB(本船甲板渡し条件) | 商品価格のみ | 送料・保険料を含まないため、比較的高価な商品でも免税の対象になりやすい |
CIF(運賃・保険料込み条件) | 商品価格+送料+保険料 | 合計額が限度額を超えやすく、課税対象となる貨物が増える傾向がある |
輸出先の市場でどちらの方式が採用されているかによって、同じ商品でも課税・非課税の扱いが変わります。価格設定の前に必ず確認が必要です。
日本からの越境EC輸出において、現在で最も注意が必要な変化がEUです。
2026年3月26日に欧州議会とEU理事会が正式に合意し、2026年7月1日に施行されました。EUに輸入される150ユーロ以下の貨物の関税免除(デミニミス)は撤廃されています。IOSS(輸入ワンストップショップ)に登録しているか否かにかかわらず、すべての越境EC輸入貨物に対して、輸入申告書の申告行ごとに3ユーロの関税が課されます(1つの申告行には関税分類に応じて複数の商品を含められる場合があります)。この3ユーロの関税はEU全体のECフローの約93%をカバーする暫定措置であり、2028年7月までの適用が予定されています。2028年以降はHSコードに基づく通常の関税率に移行する予定です。
なお、VATは2021年7月に22ユーロ以下の免税枠が廃止され、150ユーロ以下の貨物にも課税されています。2026年7月の変更は、これに加えて関税免除も終了したという点が新しい動きです。
今回の制度変更では、課税だけでなく書類要件の強化も大きなポイントです。2026年11月1日から、EU向けB2C貨物には次の3種類の製品識別情報(PID:Product Identifier)を申告書に記載することが必須になります。
EU委員会は、PIDの提供について、導入初期は柔軟に運用する方針を示しています。PIDは引き続き法令上の必須要件です。ただし一定の移行期間中は、PIDが不足していても、税関が直ちに貨物の通関・引渡しを停止しない可能性があるとされています。
これはPID要件の免除を意味するものではありません。EUは2027年第1四半期にこの暫定運用を見直す予定です。本格運用に備えて、商品マスタへの識別コードの登録やシステム対応を引き続き進めていただくようお願いいたします。
2026年11月1日から、EU向けのすべてのB2C貨物に、EU税関による取扱手数料(Handling Fee)が課される予定です。書類(ドキュメント)の貨物は対象外です。
現時点でEUは1申告行あたり2ユーロの手数料を提案していますが、最終決定ではありません。最新の公式情報を継続してご確認ください。
適用除外の条件は複雑であり、自社の取引形態に応じて税務・通関の専門家への確認を強くお勧めします。
デミニミスが撤廃されると、「商品価格+送料」だけで考えていたコスト構造が変わります。輸出先で関税・税金・手数料が発生する場合、どちらが負担するかを決めないまま発送を続けると、次のようなリスクが生じます。
DHLでは、配達先の国で発生する関税の支払いについて、発送人負担・受取人負担のどちらにも対応しており、EC事業者のビジネス運用に合わせて柔軟に選択できます。
条件 | 内容 | 特徴・実務上のポイント |
|---|---|---|
DDP | 発送人(EC事業者)が関税・税金を負担する方式 | DHLが輸入時の関税・税金支払いを代行し、後日事業者へ請求。 |
DDU ※旧Incoterms表現 | 受取人(購入者)が関税・税金を負担する方式 | DHLが通関手続きおよび関税・税金の立替処理を行い、受取人へ請求・回収。 |
2026年11月から導入予定のEU取扱手数料も、関税・税金の支払者(DDPの場合は発送人、DDUの場合は受取人)に請求されます。どちらの方式が適しているかは、販売する商品・市場・価格帯によって異なります。なお、一部の物流会社ではDDPのみ対応となる場合があるため、サービス選択時にはご注意ください。DHL Expressは両方式に対応しています。対応条件は輸出先国や輸送条件によって異なりますので、詳細はDHLまでお問い合わせください。
コストを正確に把握するには、DHLのランディングコスト計算ツールのご活用をお勧めします。関税・税金を含めた総費用を事前に把握しておくことで、競争力のある価格設定と、安定した利益率の維持につながります。
制度変更に伴い、通関書類の精度がより一層重要になっています。税関当局は申告内容の不一致を検出するためのシステムを整備しており、意図的な過小申告は重大なコンプライアンス違反となります。
申告内容に問題があると判断された場合、貨物の差し押さえや追加の罰則が科される可能性があります。また、申告の誤りが繰り返されると、より厳しい税関審査の対象となるリスクもあります。
コマーシャルインボイスの内容確認についてはDHLのコンプライアンスチームがサポートしますが、申告内容の最終的な正確性はお客様ご自身でご確認いただく必要があります。不明な点は税務・通関の専門家にご相談ください。
制度変更が続く中で、物流パートナーの選択が事業の安定性に直結します。DHLでは、EU向け越境EC輸出事業者向けに以下のサポートを提供しています。
2026年11月からのPID必須化や取扱手数料への対応については、まずはDHLスペシャリストにご相談ください。
2026年7月1日から施行されています。150ユーロ以下の輸入貨物の関税免除が撤廃され、越境EC貨物には申告行ごとに3ユーロの関税が課されています。さらに2026年11月1日からは、EU向けB2C貨物へのPIDの提供必須化と、EU税関による取扱手数料の導入が予定されています。なお、VATは2021年7月から150ユーロ以下の貨物にも課税されています。
EU向けのB2C貨物(書類を除く)に、EU税関が課す手数料です。現時点でEUは1申告行あたり2ユーロを提案していますが、最終決定ではありません。150ユーロ以下の貨物では3ユーロの関税に、150ユーロを超える貨物では通常の関税に加えて発生する予定です。請求先は関税・税金の支払者(DDPの場合は発送人、DDUの場合は受取人)で、DHLの手数料ではありません。
EU委員会は、導入初期は柔軟に運用する方針を示しています。一定の移行期間中は、PIDが不足していても、直ちに通関・引渡しが停止されない可能性があるとされています。ただし、PIDは法令上の必須要件で、EUは2027年第1四半期にこの暫定運用を見直す予定です。本格運用に備えて、引き続き準備を進めてください。
DHLのMyGTSに搭載された検索機能を使って、品目ごとに適切なHSコードを特定できます。正確なコードの割り当ては、適用税率の確定と免税要件の確認に直結します。不明な点は通関の専門家にもご相談ください。
DHLではDDP(関税込み持込渡し)とDDU(関税抜き持込渡し)の両方に対応しており、事業者のビジネスモデルに合わせて選択できます。いずれの方式でも、DHLが輸入通関および関税・税金の処理手続きをサポートします。DDPを選択した場合は、DHLが関税・税金の支払い手続きを代行し、後日発送人事業者へご請求します。一方、DDUでは受取人が関税・税金を負担するため、事前の案内が重要です。
2026年11月から導入予定の取扱手数料も同じく、関税・税金の支払者に請求されます。なお、対応可否は輸出先国や輸送条件によって異なりますので、詳しくはお問い合わせください。
EU・米国に加え、日本を含むアジア各国でも制度の見直し議論が進んでいます。規制の動向はDHLのMyGTSや各国税関当局のウェブサイトで確認できます。DHLが規制情報の収集をサポートすることで、お客様は販売と事業成長に注力いただけます。
【免責事項】
本記事に記載の制度・税率・スケジュールは、2026年10月時点の情報に基づいています。EUの取扱手数料の金額やPIDの運用方針など、今後変更される可能性がある内容を含みます。最新情報は各国税関当局または税務・通関の専門家にご確認ください。DHLは税務・法務アドバイスを提供するものではありません。