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アジア9カ国のデミニミスを一覧比較|関税コストを抑える輸出戦略

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「デミニミス(De Minimis: 非課税基準)」とは、「ごくわずかな事柄には法を適用しない」というラテン語由来の法律概念です。国際貿易においてこの考え方は、輸入貨物の申告価格が一定の基準額を下回る場合に関税・消費税を免除する制度として具体化されており、各国の税関・通関制度において広く採用されています。

アジアパシフィック地域は、日本からの主要輸出先が集中するエリアであり、国ごとにデミニミスの基準額・適用条件・免税の範囲が大きく異なります。「基準額以下なら関税なし」と思い込んだまま輸出すると、現地で予期せぬ課税が発生し、顧客の受取拒否や返品につながるリスクがあります。

本記事では、中国・韓国・ASEAN主要国・オーストラリア・インドを対象に、2025年時点の最新制度をわかりやすく解説します。日本の輸出事業者・越境EC事業者の方が、正確なコスト計算と適切な対策を講じるための実践的な情報をお届けします。

デミニミスが日本の輸出事業者にとって重要な理由

デミニミスは、ラテン語の「De minimis non curat lex(法は些細なことを問わない)」に由来します。輸入貨物の価格が一定の閾値を下回る場合、税関当局はその金額を課税するには小さすぎると判断し、関税を免除します。

日本からの越境EC・B2C輸出において、この制度は非常に重要です。デミニミス基準を下回る価格帯で販売できれば、関税コストを顧客に転嫁せずに済み、ランデッドコスト(総陸揚げコスト)を抑えることが可能になります。また、少額貨物は通常、通関手続きの簡略化(インフォーマル・エントリー)が適用されるため、書類作業が少なく、通関スピードが速くなるというメリットもあります。

ただし、アジアパシフィック地域では基準額が極めて低い国や、制度が複雑な国も多く、「デミニミスが存在する=実質的に非課税」とは限りません。制度の中身を正確に把握することが、コスト管理の第一歩です。

アジアパシフィック主要輸出先のデミニミス基準(2025年時点)

最新のデミニミス基準を把握することは、正確なランデッドコスト(総陸揚げコスト)計算を行う上で欠かせません。以下の表は、日本からの輸出において特に重要なアジアパシフィック主要国・地域の状況をまとめたものです。

 

市場

日本からの輸出額*1

(2024年)

デミニミス基準*2

中国

約USD 1,248億

CNY 0(課税対象。ただし個人郵便等に条件付き例外あり)

韓国

約USD 464億

USD 150未満(関税・VAT免除)

タイ

約USD 266億

免税措置なし(2026年1月1日から免税措置廃止)

シンガポール

約USD 199億

SGD 400(GST登録事業者は販売時点での税額徴収義務あり)

ベトナム

約USD 171億

免税措置なし(2025年2月18日から免税措置廃止)

インド

約USD 173億

免税措置なし

マレーシア

約USD 140億

MYR 50

インドネシア

約USD 130億

FOB USD 3まで無税(USD 3超は一般関税適用)

オーストラリア

約USD 136億

(2025年)

AUD 1,000(ただし年間売上AUD 75,000以上の海外事業者はGST徴収義務あり)

出典:*1 財務省貿易統計  *2日本貿易振興機構(ジェトロ)

*各国の制度は変更される場合があります。

 

国・地域別の詳細と注意点

デミニミス基準は国によって異なるだけでなく、商品カテゴリや取引形態によっても適用条件が異なる場合があります。以下に、アジアパシフィック主要市場の詳細をご説明します。

中国:中国への越境EC輸出は、世界でも特に制度が複雑な市場のひとつです。通常の越境EC向け輸入関税には実質的なデミニミスが存在せず、すべての取引が課税対象となります。ただし、以下の2つの例外的な仕組みが設けられています。

  •  個人郵便物の少額免税:CIF価格が50人民元(CNY)以下の個人向け郵便物については、関税・税金が免除される場合があります。ただし、これは越境EC取引ではなく個人輸入のケースに限られるため、EC事業者が日常的に活用できる制度ではありません。
  •   電商総合税(越境EC優遇税率):1回あたり5,000人民元以下かつ年間26,000人民元以下の購入に対しては、関税0%、増値税(VAT)および消費税は法定額の70%という優遇税率が適用される場合があります。ただし、ポジティブリスト(特定品目リスト)に掲載された商品に限られるため、自社商品が対象かどうかの事前確認が不可欠です。

また、中国では「行郵税」と呼ばれる個人輸入向けの一律課税制度があります。行郵税額が50人民元未満の場合は免税となりますが、これも個人の少量輸入向けの制度です。越境ECとして継続的に販売する場合は、電商総合税の適用要件を正確に把握した上で輸出計画を立てることが重要です。

*なお、中国税関の規制は頻繁に改定されるため、最新情報は日本貿易振興機構(ジェトロ)または通関の専門家にご確認いただくことをお勧めします。

韓国

韓国のデミニミス基準は150米ドル未満(米国からの輸入は200米ドル)で、この金額以下の輸入貨物については関税および付加価値税(VAT)が免除されます。日本から韓国への輸出は2024年に約464億ドルに上り、アジアパシフィック域内では中国に次ぐ主要市場です。ただし、150米ドルという基準はファッション・コスメ・食品などEC向け商品が多く該当する水準ですが、以下の点に注意が必要です。

  • デミニミスが適用されるのは1件の輸入貨物あたりの価格です。複数商品をまとめて発送した場合、合計金額が150米ドルを超えると全額が課税対象となります。
  • 酒類・たばこ・高価な腕時計などの一部商品カテゴリは、デミニミス対象外となる場合があります。
  • 韓国の通関規制も変更される可能性があるため、定期的な確認が推奨されます。

タイ

タイでは2026年1月以降デミニミスの免税措置がなく、金額にかかわらずすべての輸入貨物が課税対象となります。2024年の日本からタイへの輸出額は約266億ドルと、ASEANの中では最大の輸出先です。

タイへの越境EC輸出では、輸入関税(品目により異なる)に加え、VAT(7%)が課されます。少額商品であっても課税を前提としたランデッドコスト計算が必須です。なお、タイはデミニミス廃止の背景として、近年急増する越境EC小口輸入を国内産業保護の観点から規制強化している国のひとつです。DDPを活用し、顧客への透明な価格提示を行うことで、受取拒否のリスクを低減できます。

シンガポール

シンガポールのデミニミス基準はSGD 400です。ただし、2023年1月1日より制度が大きく変更されており、SGD 400以下の低価格商品(Low Value Goods)についても、GST(消費税)登録事業者であれば販売時点(チェックアウト時)での税額徴収義務が生じます。

具体的には、シンガポールでの年間売上がSGD 1,000,000を超える海外事業者は、GST登録が必要となり、SGD 400以下の商品であってもGST(9%)を徴収してシンガポール税務局(IRAS)に納付しなければなりません。

シンガポールは越境ECの成熟市場であり、消費者のオンライン購買リテラシーが高いため、チェックアウト時に税込み総額を明示することで購買体験を損なわずに対応できます。

ベトナム

ベトナムでは、EC市場の急成長により少額商品の輸入品が急増し、2025年1月3日付の首相決定01/2025/QĐ-TTgに基づき、2025年2月18日に国際宅配便で送られる輸入品に対する輸入関税と付加価値税(VAT)の免除措置が廃止されました。

インド

インドにはデミニミスの免税措置がなく、すべての輸入貨物が課税対象です。2024年の日本からインドへの輸出額は約173億ドルで、製造業向け部品や産業機械が中心ですが、越境EC市場としても成長が注目されています。

インドの輸入関税は品目によって異なりますが、消費財・電子機器・アパレルなどには比較的高い税率が設定されている場合があります。また、関税に加えてIGST(統合物品サービス税)が課されるため、ランデッドコストが想定より高くなるケースが少なくありません。インドへの越境EC輸出を検討する際は、品目ごとの税率確認と正確なコスト試算が不可欠です。

マレーシア

マレーシアのデミニミス基準はMYR 500です。この金額以下の輸入貨物については、輸入関税および販売・サービス税(SST)が免除されます。ただし、以下の点に留意が必要です。

  • MYR 500は現在のレートで約16,000円前後に相当します。アクセサリー・コスメ・生活雑貨など一般的なEC商品の多くがこの範囲に収まる可能性があります。
  • マレーシアでは2023年より低価格輸入品に対する規制強化の議論が進んでおり、制度変更の可能性があります。最新情報の定期確認を推奨します。
  • 食品・医薬品・化粧品など特定カテゴリには別途規制が適用される場合があります。

インドネシア

インドネシアのデミニミス基準はFOB価格でUSD 3(約450円)まで無税と、事実上ほぼ全商品が課税対象となる水準です。USD 3を超えた場合、品目に応じた一般輸入関税が適用されます。

2024年の日本からインドネシアへの輸出額は約130億ドルですが、製造業・資源関連が中心であり、越境EC向けの小口輸出はこれから成長が期待される分野です。

  • インドネシアでは越境EC経由の小口輸入に対して規制が強化されており、特に衣類・電子機器など一部のカテゴリで高い輸入関税率が設定されています。
  • VAT(PPN)は12%(但し実質は11%継続)で、輸入時にも課税されます。
  • インドネシアでの販売を本格化する場合は、現地のフルフィルメントパートナーとの連携や、一括輸送によるコスト最適化を検討する価値があります。

オーストラリア

オーストラリアのデミニミス基準はAUD 1,000で、アジアパシフィック域内では比較的高い基準額を維持しています。ただし、「AUD 1,000以下なら無税」とは必ずしも言えない点に注意が必要です。

2018年7月より、海外事業者がオーストラリアの消費者に低価格商品(AUD 1,000以下)を販売する場合、年間のオーストラリア向けGST課税売上がAUD 75,000以上の事業者は、GST(10%)をチェックアウト時に徴収してオーストラリア税務局(ATO)に納付する義務が生じます。

  • 関税はAUD 1,000以下であれば引き続き免除されます。
  • GSTの徴収義務はAUD 75,000という売上閾値を超えた時点で発生するため、オーストラリア市場での売上規模によって対応が異なります。
  • AUD 1,000を超える商品については、輸入関税(品目による)およびGST(10%)の両方が課されます。

日本から見てオーストラリアは地理的に近く、越境ECの成長市場として注目されています。GST対応を適切に整備することで、顧客体験を損なわずに安定した販売が可能になります。

出典:日本貿易振興機構(ジェトロ) 、 Zonos

空港で最後の積み込みをするスタッフ

「デミニミス免税なし」の国への輸出でコストを最適化するには

主要市場でデミニミス免税が事実上撤廃されつつある現在、どのように輸出コストをコントロールすればよいでしょうか。以下に、関税・税金コストが発生する国への輸出において、コスト最適化と収益確保のための実践的な方法をご紹介します。

DDPとDDUの活用

DHL Expressでは、輸入時に発生する関税・税金の支払いについて、発送人負担(DDP)と受取人負担(DDU)の2方式に対応しており、ビジネスモデルに合わせて選択できます。

  • DDP(Delivered Duty Paid:関税込み持込渡し) は、関税・税金を発送人が立て替える方式です。タイやインドなど、デミニミス免税が廃止・縮小されているアジアパシフィック市場への輸出では、DDPの活用が特に有効です。これらの市場では、これまで関税なしで受け取れていた荷物に突然課税されるケースが増えるため、受取人が追加費用の発生を想定していないことが多くなります。DDPを選択することで受取人への追加請求をなくし、顧客体験の安定化や受取拒否・返品リスクの軽減につながります。
  • DDU(Delivered Duty Unpaid:受取人関税負担方式) は、関税・税金を受取人が支払う方式です。事業者のキャッシュフロー管理がしやすい反面、受取人が追加費用を把握していない場合は受取拒否や顧客満足度の低下を招く恐れがあります。導入する際は購入時点での明確な案内が不可欠です。

最適な方式は商品・市場・価格帯によって異なります。また、物流会社によってはDDPのみ対応の場合もありますが、DHL Expressは両方式に対応しています。対応条件は輸出先国や輸送条件によって異なりますので、詳細はお問い合わせください。

チェックアウト時の価格の透明性確保

現代の消費者は価格の明確さを重視しており、隠れたコストは購入を断念する主な理由のひとつです。商品代金・送料・関税を含むランデッドコスト(総陸揚げコスト)をチェックアウト時に明示することで、顧客の信頼を高め、国際配送のコンバージョン率向上につながります。

リアルタイムの税金・関税計算ツールをサイトに導入し、シンガポールのGSTやマレーシアのSSTなど、購入時点で費用を徴収する仕組みを整えることで、配送プロセスにおける摩擦を減らすことができます。

現地倉庫への一括輸送

低価格商品を1件ずつ国際配送すると、1件あたりの通関手数料が積み重なり、コスト増加につながります。オーストラリアや韓国など輸出量の多い市場では、現地のフルフィルメントセンターへの一括輸送を検討してみましょう。関税支払いをまとめることで、通関コストを大幅に削減でき、ラストマイル配送のスピードアップも期待できます。

 

デミニミス制度変更後の時代に備えて

2025年以降、アジアパシフィック各国でデミニミス基準の見直しや規制強化が続いており、「関税なしの小口輸出」が通用しにくい環境になりつつあります。各国のデミニミス基準は今後も変動する可能性があり、輸出事業者には制度変更を常に把握しながら柔軟に対応していく姿勢が求められます。とはいえ、適切な準備と戦略があれば、ビジネスへの影響を抑えながら海外市場での販売を継続することは十分可能です。

そこで活用したいのが、DHL Expressが無料で提供するMyGTS(マイグローバルトレードサービス)です。通関に関する規制情報の確認からコスト試算まで、国際配送に必要な作業をひとつのプラットフォームで完結できます。既存のDHL Expressアカウントでログインするか、新規にMyGTSアカウントを登録するだけで、以下の機能をすぐにご利用いただけます。

 

  • 出荷前プラン(Pre-shipment Planner):出荷国・仕向国、商品情報を入力すると、必要書類やコストをまとめてPDF化。
  • HSコード検索(Tariff Code Finder):キーワードやコードを入力すると、AIが正しいHSコードを提案。
  • ランデッドコスト(総陸揚げコスト)試算:輸送費、保険料、関税・税金を含めた総コストをシミュレーション。
  • 国ごとの規制・書類要件確認:仕向国ごとの通関規制や必要書類を事前に確認できます。
  • 通関書類・テンプレート:必要な書類のサンプルやテンプレートを簡単に収集できます。
  • 商品カタログ機能:過去の検索履歴・商品情報・HSコードを登録しておくことで、繰り返しの発送作業を効率化できます。

通関の複雑さに悩まされることなく、海外市場でのビジネスを継続・拡大していくために、ぜひDHL Expressのサービスのご活用をご検討ください。

【免責事項】

本記事に記載の制度・税率・スケジュールは2026年5月時点の情報に基づいています。各国の規制は変更される場合があります。最新情報は各国税関当局または税務・通関の専門家にご確認ください。DHLは税務・法務アドバイスを提供するものではありません。